第5章 カ タ チ
「…………そうか、お前も寂しいか」
「!」
コタツの頭を撫でながらボソリと告げる姿を見て、イゾウは静かに息を飲んだ。
これまでチエに関して反発した態度でいたのに、ここに来て初めてエースのチエに対する素直な気持ちを知った。
「エース、お前…」
イゾウがエースに問いかけようとした時、それは上空の不死鳥によって遮られた
「次の島は夏島だよい!」
マルコの言葉に皆歓喜で雄叫びを上げた。その声に口を開いたままのイゾウや、初めてのチエは置いてけぼりにされていた
「マルコ!また1人で先に見てきやがったな!」
「毎回言ってるだろ、俺の特権だよい」
先程とは変わって、エースは明るくマルコに問いかけた。いつも通り、能天気にだ。
チエはそんな彼を見てどこか不信感を覚えた
『エー…』
「チエ、親父が呼んでるよい」
『……っ、』
…わざと遮ったかのようなタイミングだ。思わず顔を顰めそうになるのを抑えつつ、ちらりと呼び損ねた相手を伺う
しかし特に声が届いている様子もなく、気持ち下がり目に返事を返した。
(エースは引き留めたりなんて、しないよね)
白ひげの話というのは、誰もがもうわかり切っていた
だから「行くな」と、無駄だとしても止めてくれないか期待してしまう
そんなちっぽけな期待に答えてくれるような男じゃないこともわかり切っていたのに。
言われるがままについて行けば、彼の部屋には直ぐに着いた。だだっ広い船の中央に位置する場所。前来た時は彼の部屋だとは気づかなったけれど。
「……話はわかっているな」
お腹の底に響くような重低音。覇気を織りまぜた威圧感と、表面に出る穏やかな口調に自分の足元がグラつきそうになる
『…あぁ。』
ここで怯んでいられない
まだ私は弱い所を見せちゃいけない
1つ息を静かに吸って、もう一度真っ直ぐ白ひげを見据えた。
これが世界だと言わんばかりの巨体と圧を全身で感じながら、押し返すように口を開いた。