第5章 カ タ チ
私がこの船にいる以上、六式や覇気の特訓はできない。客人とはいえ、彼らに危険が及ぶことはさせないだろう
一番理想なのは、「よく無事に戻った」と認められ元の地位のまま軍に留まれることだ。
けれどそれが一番難しい…
これ以上じいさんにも無茶はさせられない
となれば、海軍以外の方法で探さなきゃ行けないのかな……
そう思考が暗く沈みかけた時、目の前の扉が勢いよく開いた
「チエ!!陸だ!島が見えた!メシ食いに行こう!」
『エッ、エース…!』
扉を蹴破る勢いで入ってきたのは、この部屋に無許可で入ってもいいと許した人物
とはいえ、ノックもなしに来るとは思わなかった
ん??
ちょっと待って、今なんて?
『島が見えた?』
再度問いかけてみるも、その途中で腕を引かれて部屋から連れ出された
『わわっ、ちょっ早い!!』
甲板にはエースと私だけでなく、他のクルー達も島を望遠鏡で見たりしていた
同じく甲板にいたのだろう。コタツもこちらを見つけて主……ではなく私の方へ駆け寄ってくる
「おう、コタツ。お前も見に来たのか?」
私の足元に来たコタツに目を落とすと、そう問いかけた
出会い頭のように飼い主の威厳がどうのと言わないあたり、エースらしいなあとぼんやり思う
「おっと、これはご主人様交代か?」
コタツの後を追うようにやってきたのは、イゾウともう1人、手配書で確認したことのある顔だ
「初めまして海兵のお嬢さん。おれは五番隊隊長ビスタだ」
『!!
あの、花剣の!』
「あぁ、おれのことを知っているのか」
海兵どころか、剣術を身につける者でこの名を知らない者はいないだろう。剣豪と言えば鷹の目の次に上がる名だ