第5章 カ タ チ
諦めかけて下を向いた時だった
パサッ
『わっ、』
頭に何かが落ちてきて、思わず空を見上げた
そこにあるのは、朝にも見たようなカモメの影。ここではニュース・クーとよばれるカモメの新聞配達員がいる。世界中を飛び回り、反政府組織や海賊でも金さえ払えば購入することが出来るのだ
しかし、朝刊はもう既に届いている。ということは今落ちてきたのは無造作に配られる号外新聞だろうか
とりあえず拾ってみる
『海賊切り裂きジャック 降壇か……』
「もう情報が漏れてるとは、流石だよい。ん?」
マルコが私の頭上から逆さまに記事を覗き込むと、首を傾げた
そんな彼に同じく私も首を傾げると、マルコは急に新聞を奪い取った
『ちょっ、』
「おい、チエ!……お前、死んだことになってるよい」
『え…?』
指を刺された箇所をよく見てみると、私の名前の後に" 殉職 "の2文字が並ぶ。
号外のほんの四隅に書かれた、小さな記事。世界にとってはほんのちっぽけな事なのに、何故かマルコはそれを見つけた
『本当だ……しかも、殉職したことで階級が上がってる』
「少佐から……中将!?いくらなんでも上がりすぎだよい!」
特例で准将から少佐へ上がったことでさえ異例だというのに、何故こんなにも階級があがっているんだ
よくよく記事を読んでみると、どうやらあの孫バカなじーさんが関わっているようだった
「"チエ少佐は英雄ガープ中将が育てた海兵であり、切り裂きジャック逮捕は彼女のおかげである。"とガープ中将本人が語っており極めて異例ではあるが、亡き彼女の勇猛さと高い実績を証して中将とする…… だとさ」
『あの人はそんな立派なこといわない。きっとこうでもしなきゃ海軍をやめるとか潰すとか我儘を言ったんだろう』
あの人も、私を本当の孫みたいに可愛がってくれていた。…帰ったらとんでもなく怒られるんだろうな、、
ルフィだけじゃない。
じーさんの愛情を注がれたのは
『………』
「どうしたよい?」
『…もし、無事に戻れたら…』
私は中将になるんだろうか
突然浮かび上がった2文字がとんでもなく大きく重く感じる。それがどんなに夢見たものであっても、実際に背負う覚悟が私にはあるんだろうか…
なんだか急に不安になってきた