第5章 カ タ チ
「はぁ?作戦に参加したい!?」
普段あまり大声を挙げぬマルコが、ギョッとした顔で叫んだ
『しーっ!声が大きい!』
エースに聞かれたらどうするんだ
絶対止められるに決まってる…!
掃除をする下っ端や、船縁で昼間から飲み交わす乗組員たちが1度こちらを一瞥したが、「またか」と言ったように呆れ顔で視線を戻した
最近このモビーディック号を騒がせる人物といえば、物珍しき女海兵しかいない。
「何の真似だよい」
『Dr.ヘイブンをマルコとエースの隊で追っていると聞いた。私にも手伝わせて欲しい』
恩を返したい、という名目であわよくばDr.ヘイブンを私が仕留める。
正直に言って、手ぶらでは軍に帰れない。海賊が海兵を生かして送り届けるなんて、スパイか何かに疑われて失脚させられるのがきっとオチ。
それに、Dr.ヘイブンを追うとなればこの航路よりも、早く陸に辿り着けるかもしれない
「ダメだよい」
『軍の持っているDr.ヘイブンの情報を渡す』
「海軍の情報より、俺たちの方が上だよい。ついこの間横槍入れられたの忘れたのかよい」
『……っ、…』
マルコの言う通り。
正論すぎて、咄嗟に開いた口からは何も出てこなかった
「どうして危険な方に首を突っ込みたがるんだよい」
溜息と共に吐き出された言葉が、エースのものと重なった
前にも似たような言葉を言われて、その時はまず最初に反抗的な言葉が浮かんできた。けれど今は、跳ね返す程の目的や想いを持っていなかった
今の私に、海賊と戦う理由が本当にあるのか……?
そう、心の隅で思っていたからだった
この船に来て、海賊も海兵も変わらないと知った。やり方は違えど、「悪」では無い海賊はいる
彼らを信じたい。だから手助けしたい。その気持ちは本当。
けれど、必要ないと言われてしまえばそこで引き下がるしかない。ここは彼らの船だから
私の命が握られているとかそんな理由じゃなくて
ただ、私のことを心配してくれているとわかったから
だから、無茶も言いずらくなる……