第5章 カ タ チ
『どうしてジャックは、そんな薬を……』
「Dr.ヘイブンの創った麻薬の作用は3つ。1つは精神的高揚、2つ目は運動能力の向上、3つ目は痛覚や空腹感覚を鈍らせ、視力、聴力などの五感を鋭くさせる」
だからか。
ジャックの頬は痩けていて、筋張った手足は傷口にウジ虫が湧いている。
「……この薬は飲めば飲むほど、死に近づいていく。脳だけでなく、体の臓器やあらゆる機能を極わずかな時間でダメにするんだ。コイツは知らなかっただろうがな」
『!』
「……先生っ、先生ェ!どういうことなんだよ、俺ァ、死なねぇって、この薬を飲み続ければ、強く永遠に生きながらえるって言ってたじゃねぇかよォ……ッ」
牢屋の中で、神にでも懇願するように叫び、鉄格子に縋り付いた
憐れな......。
そんな薬がこの世にあるわけが無い。ましてや、自分が加担していた麻薬がどんなものか知らずに溺れるなんて
『………それがお前の結末だ。覚えているか知らないが、お前が葬ってきた人達の死に顔を自分に当て嵌めて待つがいい』
一体お前はどんな顔をして最期を迎えるのか。微塵も興味はないがな
誰にも見届けて貰えない悲しさを、己の愚かさをジャックは知らなければながらない。
『Dr.ヘイブンはまだ捕らえられていないのか?』
「あぁ。アンタら軍もうろちょろしているからな」
元々海軍として追っていた獲物。こちらにとっても横取りされては軍の威厳にヒビが入る……
既に海軍は白ひげが関与していることを知っているはず。もしかしたらこの船ごと狙われる可能性もある
『…………私に協力させてくれないか』
しばらく考えて出たのは、協力の2文字だった。もしも海軍が白ひげ海賊団ごと狙っているとしたら、彼らの行動パターンは海兵である私がよく知っている。
この命を拾い、繋いでくれた恩、仇で返したくはない
それに運良く私は海軍にすんなり戻れるかもしれない……
「俺には判断しかねる。この件は、1番隊と2番隊で受け持つことになっているから、隊長に打診してみよう」
『助かる。私からも直接頼ませてくれ』