第5章 カ タ チ
ガシャン
「グルルルッ……」
鎖の擦れる音がして突然コタツがそちらに唸り出した。
『……?』
何かに警戒しているような声。コタツの向く先は暗闇、否牢屋の中だ
波と共に揺れる船内は、天井にぶら下がったランプが1つ、一緒になって揺れる。グラグラと辺りを照らしては、振り子のように暗闇を行き来する。
ドクリ、心臓が嫌な音を立てた。
この気配を、私は知っている
揺れるランプは、波の大きさに比例して大きく、またさらに大きく、辺りを照らしていく。そしてついにその灯りの元に晒し出された
「……よぉ、……久しぶりだな」
『…お前は…っ、』
どうしてここに、お前がいるんだ
『ブラッディー海賊団船長、血塗れのジャック.....。』
この間までの生き生きした姿とは打って変わり、傷だらけの上にボロボロだ。戦いだけでこうなったわけでは無さそうだ。
「知り合いか」
『私たちが追っていた海賊で、交戦した際にちょうどお前たち白ひげ海賊団がやってきた』
「なら話は早い。」
ドーマは静かにジャックと向き合った。その隣に私も並ぶ
「コイツらは俺たちの獲物だ」
『目的はなんだ』
「親父のシマを荒らした。裏で麻薬商売をやってたのさ。あの島が親父の縄張りだと知っての仕業か」
ドーマはしゃがみこむと、低い声で問いただした
「……あぁ、そうさ。白ひげのシマだからこそ、あそこで売れた薬は、他の島で何倍もの価値となって儲けんのさ」
手だし不可能な、世界最強の男の縄張り。そこで麻薬商売が成功すれば、その薬がどんなにバレない精巧な代物か証明できる。そしてDr.ヘイブン、ブラッディー海賊団の名がまた上がる、そういう仕組みのようだ
『Dr.ヘイブンと一緒じゃないのか』
「……お陰様で、俺ァ先生に見限られちまった…ッ!!もう、俺には、俺にはアレがなきゃ……ッ」
明らかに様子がおかしい。袖を捲し上げ、腕を毟る姿を見てようやく察した。
『まさか、こいつも?』
「あぁ…。Dr.ヘイブンの麻薬にやられてる。あの薬は特殊で、麻薬から脱するにはDr.ヘイブンのもつ解毒剤のようなものを飲まなければならない。……ただの麻薬じゃねェんだ」
Dr.ヘイブンが白ひげに追われる理由も、麻薬の存在も軍は何一つとして、情報を得ていなかった