第5章 カ タ チ
「なんだ、コタツが連れてきたのか?」
「にゃーん」
薄暗い奥から、手前のランプの前までコタツを連れて現れた。足元を歩いてついてくるコタツは、彼から目を離さず、彼もコタツの頭を撫でたままだった。もしかしたら、エースよりも懐いているんじゃないかと言うほど、コタツがメロメロになっている
『あ、』
明かりの元に現れた彼に見覚えがあった。数ヶ月前白ひげの傘下になった海賊の船長、遊騎士ドーマだ
「アンタが噂の海兵か。あっ、コラ!」
「キキッ!」
『わっ、、』
お互いの姿が見えるなりドーマが肩に乗せていた猿が、こちらへ飛び移ってきた。敵意を持っているわけではなく、興味津々に私の体を渡り歩いてみせる
「ほら、バナナやるから戻ってこい」
「ウキ!」
ドーマがバナナを懐から出した途端、猿はすぐさま戻って行った。よく手懐けられた賢い子だ
「俺の相棒がすまなかった。」
『構わない。慣れている』
「へぇ。コタツも懐いているようだし、アンタは大物そうだな。歓迎するぜ」
『!』
初対面の海賊に、こうもすんなり受け入れらるとは驚きだ
動物を相棒と呼ぶのだから、彼の基準に合わせると私は危険人物に当てはまらないらしい
「で、俺に何か用か」
『コタツから陸の匂いがしたから、一緒に行った者の所へ連れてきてもらったんだ』
「コタツが案内を?そりゃあ大したもんだ」
ドーマ曰く、コタツは珍しい種類で、とある島で密猟者の罠に掛かってケガをしていたところをエースに助けられたそうだ。
この船では唯一、動物を連れたドーマと、自分を救ってくれたエースを初めとする元スペード海賊団にしか心を許していないのだとか
「こいつも、ここに来てだいぶ大人しくなったが、ここまで人に懐くのは俺たち以来だ」
『そうなのか?』
「あぁ、今は可愛く鳴いたり、大人しくしているが船に乗った当時は警戒心でエースたち以外近づけなかったのさ」
そうか、コタツにとってもここは敵船だったんだ
自分の居場所を奪われるようなもの。……よくエースはこの船に乗ることを決断した
一船長としてなのか、ポートガス・D・エースとしてなのかわからないけれど
こうして今があるのは、その大きな決断の上なんだと思うと、感慨深いものがある。
もちろん海兵としてではなく、私個人として