第3章 告白(下)
皆に注目され、おどおどする。ザップさんはすでに立ち直り『なあなあ、すぐ返すから一千ゼーロばかし貸してくんない~?』とこちらにスリより、チェインさんに再び踏まれていた。
「いえ、でも、これは、『組織』ので、私は……」
もごもごと言うと、
「その『組織』とやらは一体君に何の寄与をしたのかね?」
静かな声がする。
「君に呪わしき『不死』を与え、その後は一切の人間的対応をせず、今もこうして放置し、ヘルサレムズ・ロットの不法に蹂躙させるに任せている。
君がそんな外道どもに、忠誠を貫く必要も義理も無い!!」
壁がびりびり震えたのは、決して錯覚ではない。
クラウスさんが、私をまっすぐ見据えている。
私ではなく、私の背後の何かに怒りを向けている。
「あの、その……」
まるで殺意を向けられたかのように、冷たい汗がだらだら出る。
けど骨の髄までに刻み込まれた恐怖は、『組織』に打ち勝つすべを知らない。
「カイナ。君が選べないというのなら、私が選ぼう。だから――!」
クラウスさんが一歩、私の方に踏み込む。私はヒッと震え、一歩下がる。
視界の端で、スティーブンさんが『やれやれ』という顔をし、こちらに近づいてくる。
ホッとしたけど、私は怖くて泣きそうだった。
「ん?」
そのとき、すぐ近くで声がした。
とてもおぞましい泣き声。子猫か赤子の断末魔のような、人の嫌悪を誘う、嫌な声。
「タマちゃん!」
私は金縛りが解け、叫ぶ。
あちゃー。私の気配が近づいたからか、実験室から出ようとしてるんだ。
私はクラウスさんから逃げるように部屋の外に走り出す。
「君! 危ないわよ!!」
チェインさんが私の前に出て、私を下がらせる。
うわあ。奥の方がチカチカ光ってる。
物理トラップや攻式呪術陣が発動しまくっているんだ。
「カイナ! 君はここで待機していたまえ!!」
すぐにクラウスさんたちも飛び出し、私を追い越して、タマちゃんのいる方向に走っていく。
「あ、ちょっと! ちょっと待って下さい!」
私は慌てて後を追った。まあ彼らの脚力にはとても追いつけなかったが。