第3章 告白(下)
そしてやっと追いついたとき。
そこは『実験室』というか『実験場』であった。
広い広い実験場は、あちこちの壁や床が溶かされたり、破壊されたりで無残なありさまであった。
ああ、うるさい。耳を聾(ろう)さんばかり。タマちゃんの凄まじい泣き声が響きまくっている。
タマちゃんは全長5メートルばかりの、半分腐ったみたいな猫である。
悪臭もすごいが、ボタボタと口から酸性のヨダレを垂らしてるのがまたエグい。
腐った腹の穴から垂れてる内臓とか、腐ったところが再生してくとか、色々グロい。
「やっほー! タマちゃん。やっほー!」
私は皆の後に続いて実験場に入り、タマちゃんに手を振る。すると、向こうもこちらに気づいた。
私を見てがぁぁ、と口を開けた。腐った牙が酸性のヨダレと一緒にぼとぼと落ちていく。まあ直後にまた生えてきてるけど。
「おい……チビ」
ザップさんが血法の刃を構えながら言う。
「はい、何ですか?」
「おまえ、あれに懐かれてるんじゃなかったのか?」
「懐かれてなんかいませんよ。タマちゃんは私を『大好き』って言っただけです」
「食料的な意味だったのかよっ!?」
あ。皆の視線が集まってる。説明しとくべき?
「『組織』では不死の能力を持った生物兵器を生み出そうとしてですね。
色んな動物に私の遺伝子を混ぜて生物を合成したんですね。
まあほとんどは死んだんですが、唯一、タマちゃんだけ生存して。
で、再生能力増強のため、生まれたときから私のお肉食べてるんですよ。だから私はもうお母さんの味的な」
「おふくろの味じゃねえだろ! おふくろ食ってるだろ、それ!!」
私の子供じゃないっつうに。
「で、あれは君みたいに死んでも生き返るわけ?」
チェインさんが言う。
「いいえ。さすがにそれは、私の専売特許みたいですね。
でもハンパに再生するから、ああして苦しみ続けて」
私はタマちゃんを見る。腐った猫は、私を摂取しようと、自分を縛る鎖を必死にちぎろうともがいていた。
「ならば、速やかに送るとしよう」
クラウスさんの声がした。
ナックルをはめ、タマちゃんの方に悠然と歩いて行く。
だがその目は、怒りを通り越し獣性すら帯びていた。
スティーブンさんが、やれやれ、と肩をすくめ、後に続く。
「あ、でもですね。一つ気をつけてほしいのが――」