第3章 告白(下)
金庫の中は札束や金銭的価値のある書類の山だった。
「すっげえ! やっぱついてきて良かったぜ! おーおーおー! 現ナマだけで数百万ゼーロはいくぜ、これは!!」
ヘルサレムズ・ロットでは貨幣の相場はちょくちょく変動するが、大ざっぱに1ゼーロ=100円あたりで考えたまえ!
「あなたの物じゃないです!! これは『組織』のものです!!」
目の色変えて『ヒャッハー!!』と現金に飛びつこうとするケダモノを、後ろから必死に押さえた。
「止めたまえザップ。その中身は彼女のものだ」
「そうですよ! そのお金は私の――へ?」
クラウスさんが唐突に言い出したことに、目を丸くする。
…………
「土地登記済権利証に各種登録書、保証証書から株券まで。
簡単に言うと、ここに関する所有権利証と財産が丸ごと無傷で残っている状態だ」
一通り書類をチェックしたスティーブンさんが言う。
うーむ。あの日、全滅した『組織』の人たち。重要書類も実験データも放棄して、ひたすらに手元にある現金をふところに詰め込んで逃げようとしてた。
改めて考えると『組織』の人って超強いスペシャリストの集団と思ってたけど、何か小物っぽいなあ……。
クラウスさんやスティーブンさんなら、こんな無様な真似はしないだろうに。
「…………!」
自分で考えたことに自分で驚く。以前は『組織』を憎悪や恐怖はしても、こんな見下すようなことは考えられなかった。
と、とにかく良かったー。これで『組織』本部に堂々と報告が出来る。
「そういうわけで、君がもらい受けてもいいんじゃないか?」
と、スティーブンさん。
「なんすか、そのトンデモ理論」
「トンデモも何も、ここはヘルサレムズ・ロットだよ? 仮に君に不死属性が無ければ、これらは今頃全てマフィアか、どこかの地上げ屋にかっさらわれて、そいつらに使われてた」
また出たな! 『ヘルサレムズ・ロット無法地帯』理論!
「と、とにかくダメなものはダメです! これらは全て『組織』の物ですから!」
「仮にその理屈を通すとしよう。だが現金だけは君が受け取る権利がある」
「もー、クラウスさんまで……」
なぜによってたかって火事場泥棒を推奨するのだ。
意味分からん。