第3章 告白(下)
その後は特に大きなことも起こらなかった。
合成魔導生物タマちゃんの泣き声はどんどん近づいてくるけど、なかなか本体に辿り着けない。
「あ~。眠い~。来るんじゃ無かった~」
とザップさんがぼやいて、チェインさんに蹴り入れられてる。
でもそのチェインさんも、思わぬ残業にちょっと眠そうだった。
ちなみに私はおめめパッチリである。
てかクラウスさん、いい加減に手を放して下さい。
「空間が歪んでいるから、体感距離を長く感じるだけだ。しっかりしろ」
スティーブンが皆を叱咤し、先に進む。
私も『組織』本部との通信機器を早く見つけたい。
え? 今まで見つけたPCを使えって? ネットワーク機能がダメになってた。
一番奥の緊急用通信装置じゃないと無理っぽい。
そしてまた、新しい部屋に着く。
皆して扉の前で待ってると、扉を抜け、チェインさんが中から現れた。
「この部屋のトラップ及び攻性呪式陣、全て解除しました」
「ご苦労さん。ザップ」
「へいへい」
スティーブンさんの指示を受け、ザップさんが自分の血を硬化して器用に鍵穴に潜らせ、キーを解除する。
そしてガチャッと音がして扉が開いた。
何度見てもすごい手際だ。
てか怪物退治や不法侵入お手の物って、どういう貿易会社なんだろう。
でもクラウスさんの雰囲気が怖いから、いつもみたいに気軽に聞けず、一人首を傾げた。
「ふあー、眠ぃ~」
ザップさんはポケットに手を突っ込み、あくびをしつつ、がに股でぶらぶらと中に入る。だが。
「お? おおお!?」
その目が輝き出す。
私もちょっとびっくりした。中にはかなり大きな金庫が無傷で残っていたからだ。
堕落王の災害の時に、真っ先に持ち出されたものと思ってた。重くて運べなかったのかもしれない。
「おおおーっ!! あるじゃねえか。ひゃっほー!!」
金庫に取り憑き、高速で解錠にかかるザップさん。
「ちょっとちょっと!」
私はクラウスさんの手をほどき、慌ててザップさんに近づく。だがチンピラは自分の血法で、あっという間にロックを解除してしまった。
そして重い扉がゆっくり開き……。
「うおおおおーっ!!」
金庫の中は札束や、金銭的価値があろう書類の山だった。