第3章 告白(下)
で、行けども行けども端っこが見えない。
「ずいぶん広いな。魔術で空間歪めてんのかよ」
ザップさんが面倒くさそうに壁を蹴った。ついでに奥に向けて怒鳴る。
「あー、クソ! うるせぇぞ、クソ魔獣!!」
進むにつれ、タマちゃんの泣き声がひどくなる。私の近づく気配を察してるんだろうな。
「だが、有効な資料も収集出来た。解析に時間はかかりそうだが」
別の部屋にはパソコン機材が、ほぼ完璧な状態で残っていた。
スティーブンさんは手袋をし、新しく見つけたデータをメモリに入れ持参したジュラルミンケースにしまう。
「あ、あのお……」
それ『組織』のだから、動かさないでほしいんですが……。
と、恐る恐る声をかけようとしたが、
「心配しなくていい。ちょっと借りるだけだよ。あとでちゃんと返すから」
『誰が返さないといった?永久に借りておくだけだ!』という何者かの暴言が不思議に脳裏に浮かんだ。
「返す返さないじゃなくて『組織』のデータを勝手に閲覧するのは……」
「大丈夫。外部には漏らさないから。それとも、僕が信用出来ない?」
はい。
即答したかったが本人を目の前にしては、どうしても言えない。
「じゃ、続けるよ。いいね?」
「えー……」
「いいね?」
「はい」
……こ、怖い。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。せっかくマフィアから守ったデータなのに。
これ絶対に私のせいになる。後で怒られる。
やっぱりこの人たち、連れてくるんじゃなかった。
足がガクガクして、冷たい汗がドッと出る。
すると、肩に大きな手が置かれた。
「心配はいらない、カイナ。私が君に代わって彼らに説明しよう。必要であれば金銭の補償もする。君が責めを負うことはない」
「はい」
言っていることは穏やかだけど、クラウスさんは相変わらず不機嫌だ。
素人の私にも分かるくらい、ぴりぴりした怒気を放っている。
「おいチビカイナ。化け物の部屋はまだかよ」
ザップさんはすることが無くて不機嫌そう。シュッシュッと血のカタナを出し、素振りまでしている。危ないなー。
「た、多分もうすぐなハズです。あ、ここ第十三実験室なんでもうすぐですよ」
私は血のついたドアプレートを指さした。
「第十三実験室?」とクラウスさん。
「『不死』者を活用した実験……つまり私専用の実験室です」