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【血界戦線】紳士と紅茶を

第3章 告白(下)



 真っ暗な教会地下部分。懐中電灯の明かりが、無人の廊下を照らす。
 ただしどの部屋にもろくな資料や機材は残っていなかった。

 無言で歩いていると、ザップさんが口を開いた。
「ところでチビ」
「その言い方止めて下さい。私はカイナ・シノミヤという名があります」
「彼女の言う通りだ、ザップ。レディに対して身体的特徴をあげつらうあだ名は、例え親しみがこもっていようと失礼なものだ」
 とクラウスさん。いや、親しみはこもってません。ザップさんは舌打ちし、
「……カイナ」
「馴れ馴れしく名前を呼ばないでいただけます?」
「こ・の・ク・ソ・チ・ビっ!!」
「呼ばれたらムカつきました! 私を名前で呼んでいいのはクラウスさんだけですー!!」
 クラウスさんの背中にささっと隠れ、銀髪のチンピラに威嚇する。
「こら、二人とも。騒ぐのは止めないか――チェイン、どうだ?」
 スティーブンさんの声に応え、チェインさんが壁から姿を現す。

「ここから先は、対侵入者用トラップの塊です。それと――奥に合成生物がいます」

「やれやれ」
 これだから魔導関係の連中は、とスティーブンさんは面倒くさそう。
「体長はおよそ5メートル。腐敗した猫のような外見です。今は活発に活動し、何度も扉に体当たりしています」

「あ、それタマちゃんです」

 はいはい、と手を上げたので皆の視線が私に集まる。
 やっぱり生きてたか、タマちゃん。

「『組織』の人たち、私みたいに『不死』性を持つ合成魔獣を作る研究もしてたんです。
 あの子、私が大好きだったから、私が近くに来たって知って暴れてるんですね」

 そして、言わなければいけないことを思い出す。

「でもですね。皆さん。タマちゃんは――」

「お嬢さん。例え君に懐いていようと、君の所属する『組織』のものだろうと、我々を襲ってきたら始末する。いいね?」

 スティーブンさんの声には、拒否を許さぬ響きがあった。

「…………はい」

 まあいいか、とうなずいた。

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