第3章 告白(下)
「君は、そのときのことを全て記憶していると……」
あ。クラウスさんの雰囲気が一気に怖くなった。
だだだだだって、あのときはスマホ無かったし。連絡する余裕とか無いし! 何とか安心させないと。
「もちろんです。でも! 私の機転で大丈夫でした!!」
超ドヤ顔と決めポーズで言ってみる。
誰もツッコミを入れてこない。
何で皆、シーンとしてるんだろう。
寂しい!!
「大丈夫って、何が? 君の命が?」
一切の感情のないお顔のスティーブンさん。
「まさか! もちろん『組織』のお金と機密情報ですよ。私、ちゃんと守り切りました!」
どんなに拷問されても、地下への入り口は崩壊したと、ごまかし通した。
いやあ私、すごくね? 映画なら超人気キャラにならね?
「……そうか」
スティーブンさんはそれっきり。
誰も褒めてくれなくて寂しい!
「じ、じゃあ行きましょう。私についてきて下さいね」
と歩き出し、
『ちょっと待てーっ!!』
チェインさんとザップさんに同時に肩を押さえられた。
「君、さっきの呪術陣で死にかけたでしょ! この先にもこんなトラップがうようよしてるって、知ってるんでしょ!?」
「ですから、私が弾よけになろうと……」
「てか、さっきのトラップさ、何でおまえを除外してねえんだよ!? 普通は身内には発動しねえだろ!?」
ザップさんはこう言いたいようだ。『防衛システムは通常、外部の者に対して発動するもの。なのに、”ここ”の内部の者であるカイナにも攻撃を向けるのはなぜなのか』と。
ああいう攻撃性の呪術陣は通常、身内の人間だけ攻撃除外するような式が付帯されてるものだ。
まあ理由は簡単。
「私のために除外式を付帯するのが面倒だったみたいで。
まあ私、実験台――じゃない、雑用だから、しゃあないです」
あはははーと笑う。
そしてハッとする。
さっきからクラウスさんが、謎の怒気を発したまま一言もしゃべらない。
うう。やっぱここのこと黙ってたの、怒ってるのかなあ。
探索は一人で充分だから、怒ったなら帰ってくれていいのに。
そしてハッと気づく。
「あ、あの。皆さん……ここから先の物は全て『組織』の物だから、勝手に取ったり動かしたりしちゃいけないんですけど……」