第3章 告白(下)
「壊滅? 何がです?」
きょとんとして、お二人を見ると、『あ、いや、その……』とザップさんが慌てた声。スティーブンさんは、
「うちの会社の話だけど?」
「あ、失礼しました」
いかんいかん。ちょっと恥ずかしい。
「いいよ。さ、クラウスもこの子との話は後にしてくれ」
「てか、なぜ皆さん、ここにいらしてるんです?」
そーっと聞いた。チェインさんも、クラウスさんの部下らしいけど。
「それはだな……」
とクラウスさんが言う。
で、説明を受けた。
『クラウスさん、手紙を渡し忘れたことに気づきテントにUターン』
→『私がいない。地下への入り口がある』
→『スティーブンさんはクラウスさんへの用事があって、テントに来た』
→『クラウスさんから話を聞き、他の部下の皆さんを呼んだ』
という流れらしい。
「えーと、この地下は、その……何て言うか……」
「カイナ。君が魔導組織の一員だったことは、すでに把握している」
え。クラウスさん、マジですか。いつバレてたんだ!
私の所属している『組織』とは魔導とかを扱う『メビウスの輪』という名で、ヘルサレムズ・ロットに新しい拠点支部を作るべく進出してきた。
で、支部の彼らが全滅して、私一人になってしまったのである。
「お恥ずかしいです。私はもっぱら雑用係でして、魔導魔術のたぐいは一切使えなくて」
「教会に地下がある話も聞いたことがある。だが君は大半が壊滅したと、説明をしなかったか?」
やや真面目顔なクラウスさん。
そういえば、そんな話もした記憶がある。
「いやあ、どうもそうじゃなかったみたいですね。あはははは!」
「嘘つけ、おまえ、知ってて旦那に隠してただろ」
チンピラは今日も意地悪である。私は『何のことですか?』とあいまいに笑う。
そして会話の間、周辺を調べてたチェインさんが、
「マフィアに荒らされた形跡が全くない。よくここを隠し通し――っ!」
チェインさんはザップさんに『おい!』と肘でつかれ、口をつぐむ。
ん? 私は首をかしげる。
「マフィアが来てたって、よくご存じですね」
「……君は覚えているのかね? そのときのことを」
クラウスさんの低い声。何なの。
「もちろんです。いやあ、あのときは怖かったですよ。
奴ら『組織』のこと知ってて、金の場所とか情報の場所とか全部話せーって」