第2章 告白(上)
■Sideライブラ
「…………」
クラウス・V・ラインヘルツはスマートフォンを持ち、ライブラのバルコニーに立ち尽くしていた。
例の少女が送信してきた写真を見ながら。
「ミスタークラウス。あの子、雑草を煮始めましたがいいんですか?」
クラウスの横にはチェインがいる。髪を早朝の風になびかせ、眼下の景色を見ていた。
チェインとクラウスだけではない。
「はー。すげえな。旦那の執念が通じたのかよ」
「あら小っさ! クラッち、ああいう子が好みだったの?」
「ま、これで休憩時間のたびに遠出されることも無くなるか」
全員が手すりから身を乗り出すようにしていた。
眼下には区画クジによって移動してきた教会があった。
ただし教会に見えるのは外見だけ。幻術による光景だ。
精鋭ライブラの面々には、教会の向こうの現実の光景が見えていた。
見えるのは教会跡地の廃墟とテント。ついでに焚き火。
ヘルサレムズ・ロットのど真ん中で、少女が一人でキャンプをしている。
「良かったなあ、旦那~。これでいつでも通い放題、ヤリ放題だぜ?」
ザップがニヤニヤと笑い、チェインに冷たい視線を食らっている。だがクラウスは聞いていない。
「だから……雑草と野菜は違うのだと何度言えば……」
少女が送ってきた写真には、ライブラのビルが写っていた。