第2章 告白(上)
「ん?」
違和感を抱き、テントの中でパチッと目を開ける。
多少はうとうと出来たらしい。
スマホの時刻を見ると、夜明け少し前だった。
クラウスさんからの通知の山は、いい加減置いておく。
あと観葉植物の写真、もう少し整理した方がいいですよ。
私が撮った写真も欲しいってメッセージがあるけど、この更地で何を撮れと。
そういえばこの前、返信に困り雑草レシピを送ったら、数百行に渡る忠告文が返ってきた。
コホン。それはさておき。
何か空気がおかしい。
だから外の光景を確かめに行くことにした。
そーっとテントの外に出て、結界と幻術のベールを抜けた。
「え……!」
目を見開く。
変わっていた。周囲の風景が全て変わっていた!
私のいる土地が、昨日とは別の場所に移動している!!
ポカーンとする私。
その私の目の前を、人間や異形の住人たちが歩いて行く。
彼らの会話が耳に入った。
「ここらへん、いつもと違くね? 人類(ヒューマー)の教会なんてあったか?」
「区画クジだとよ。今回は年末ジャンボ~とか言って、大規模に街をシャッフルしたらしいぜ」
あとは聞こえない。
脱力して座りこみ、ぼーっと周辺の景色を確かめる。
さすがは千年の覇権を占う魔境都市。
小娘の些細な悩みをものともせず『外に出たくないなら土地ごと動かす』強硬手段に出やがった。
「て、関係ないし、区画クジ会社のしわざだし」
区画クジと言うのがあって、街がシャッフルされ土地が勝手に移動することがある。
非常識にもほどがあるが、それがこの街だ。
この教会は、その土地移動に巻き込まれたようだ。
でも一体どこに飛ばされたのか、さっぱり分からない。
「クラウスさん……」
急に心細くなる。これだけワケの分からない場所に飛ばされてしまった。
もう逢えないのだろうか。
「――て、スマホがあるじゃない」
パシャッと、近くの一番目立つ建物の写真を撮り、メッセージを書く。
『区画クジでこんな場所に飛ばされちゃいました。ここがどこか分かりますか?(T_T)』
タップして送信完了! これで安心だ。
ホッとしたら、ちょっとお腹が空いてきた。
クラウスさんから返信が来るまで、朝食を作ることにしよう!
今日は気合いを入れるため、栄養たっぷりの野菜スープ!!