第2章 告白(上)
「いいじゃない。別に。招待してあげれば」
ふいに艶めいた声が聞こえた。見ると、いつ来たのかK・Kがいた。
ギルベルトの淹れた珈琲を飲みながら優雅に足を組み、
「クラッちがお熱なその子、けっこう噂になってるわよ?」
やはりか、とスティーブンは頭痛をこらえる。
「けど中には『不死』っていうだけで身構える馬鹿もいる。
先走る奴が出る前に、一度顔見せしといた方がいいんじゃない?」
確かに。神性存在と契約でもするか、『血界の眷属(ブラッドブリード)』に転化でもしない限り、『不死』なんて属性はそう手に入らない。
しかもライブラメンバーの中には、熱狂的なクラウス信奉者が少なからずいる。
敬愛するボスに得体の知れない羽虫が近づく。快く思わない奴がいてもおかしくはない。
「まあ実物を見て、あの子を脅威だと思う奴は、確かにいなくなるだろうが……」
「でしょ? あんた神経質すぎなのよ、スカーフェイス」
チッと舌打ちし、K・Kは珈琲をあおる。
スティーブンはチラッとクラウスを見て。
「……あの。さっきからの僕の話、聞いてた? クラウス」
クラウスはご機嫌だった。というか彼の関心はすでにこちらにない。
いつの間にかデスクに戻り、ギルベルトからペンと真っ白なレターを受け取っていた。
そして達筆な字で、サラサラと招待状を書き始めている。
K・Kも苦笑し、
「ま、クラッちがこうと決めたら、もうアタシたちが何を言っても無駄なんだけどね」
スティーブンは観念して肩を落とす。
「知らんぞ、クラウス。何があっても」
負け惜しみを言いつつ、K・Kの言葉には同意せざるを得ない。
決意を固めたら、どんな理屈を持ち出してもはねのけるのだ、この男は。
「アタシはまだ会ったことがないのよ。どんな子なのかしらね。楽しみ!」
彼女はすっかりはしゃいでいる。
と、そこに。
「ミスタークラウス。その子、絶対にあの教会跡地から離れようとしないんですよ?
どうやってパーティー会場まで連れて行くんですか?」
チェインがボソッと呟く。
クラウスのペンの動きが一瞬止まった。気がした。