第2章 告白(上)
「ただライブラのパーティーに彼女を招待しただけだ。
けどカイナは『部外者の自分が参加するわけに行かない』と」
当然の反応だ。記憶する限り、あの少女は社交から最も縁遠いタイプに見える。
しかしクラウスは全く別の方向に勘違いしていた。
「やはり電話で都合を聞くのでは無く、正式な招待状を送るべきだった。
あんな口頭での招待。彼女のプライドを深く傷つけてしまったに違いない」
ギルベルトの紅茶にも手をつけず、ひたすら悲嘆にくれる我らがリーダー。
というか、ちゃんと招待状を贈れば受けてもらえた、と言わんばかりだ。
その自信がどこから出てくるんだか。
「そういう問題じゃないだろ、クラウス。あの子は本当にそう思って言ったんだと思うよ。
君と違って普通は、知らない奴だらけのライブラのパーティーなんか――」
沈黙。
「ちょっと待て、クラウスーっ!!」
スティーブンの叫びが、オフィスを揺るがした。
「誰を! ライブラのパーティーに招待したって!?」
立ち上がり、クラウスに詰め寄る。
「もちろん、カイナだが?」
純真無垢な瞳に、一瞬自分が間違ったことを問いただしている気にさせられるが、スティーブンはだまされなかった。
「彼女はライブラとは無関係な一般人だ!!」
『不死』であり、魔導組織の元手下だが、今は置いておく。
「一般人だからこそだ。にぎやかな場で楽しい時を過ごせば、きっと前向きになってくれるだろう」
まあ確かに。死なないせいか、以前会ったときは生きてるんだか死んでるんだか分からない目を――。
「いや違うっ! 俺たちは秘密組織だろ!」
自ら名乗ると小っ恥ずかしいが。
「スティーブン。パーティーの場で、そこまで重要な情報交換はしない。
それに我々が頼めば、皆は泥酔状態であっても重要情報は漏らさない」
「詭弁(きべん)だ。一般人が紛れていれば皆もくつろげないし、彼女にも危険が伴う」
「スティーブン、君は何ごとも深刻に考えすぎだ。
ライブラ以外の人間を招いたパーティーなど、いくらでもあるだろう?」
「ほとんど同業者か、スポンサー連中じゃないか!!」
何でそこまで、あの少女の招待に固執する。
……色々ご立派な理由をつけているが、単に見せびらかしたいだけじゃないのか?
喉元まで出かけたが、そこはこらえた。