第2章 告白(上)
止まらない。クラウスさんからの通知が止まらないっ!!
ただし電話では無く、さっきのメッセンジャーアプリだ。
会社はどうしたんすか。終わったらあなたも帰って寝ればいいでしょうが!!
「うう。こういうのって、通知を朝までオフにする機能があったような……」
けど知識はあれど、日本のスマホと勝手が違うのか、私の手つきはぎこちない。
初めてスマホに触れるご老人のごとく、格闘してる間にも通知がしつこい。
既読機能があるため無視するワケにも行かず、渋々開くと、
『何かスマホ操作に不安は。困ったことがあればいつでも聞いてくれたまえ』
『メール機能の確認をしたいから、何か文章を送信してほしい』
『共有アルバムに、私の観葉植物の写真をいくつか入れておいた。良ければ君の感想を聞かせてほしい』
『音楽アプリにお勧めのクラシック楽曲が入っているから――』
『まだ起きているのなら、もう一度君の声を聞きた――』
「うわああああああああああっ!!」
私の絶叫がテントに響き渡ったのであった。
■Sideライブラ
所用でクラウスが出かけ、ライブラのオフィスにはスティーブンが詰めていた。
そこにチェインが音もなく降り立った。
「ただいま戻りました」
「ご苦労さん。見てきてくれたかい?」
「はい」
彼女には仕事のついでに、例の少女の様子を見に行かせたのだ。
「どうだった?」
人狼の部下は無表情に、
「疲れ切っていました」
完全に予想通りだった。
「なまじ一日中あそこにいる上、クラウスからの連絡を無視出来ないからなあ」
今やクラウスはプロスフェアー中毒に続き、スマホ中毒になりつつあった。
例の少女と一日中、連絡を取ることが可能になったこともあり、多少なりとも舞い上がっているのだろう。
ヒマがあるとプロスフェアーか、彼女に電話ないしメッセージを送る、の二択である。
ただ相手がそれを喜んでいるかというと――。
「通知音が鳴るたび、ビクッとしていますね。入力に慣れておらず、一度の返信に三十分を要することはザラ。なのにすぐミスタークラウスから折り返し返信が来る状態ですから」
完全に嫌がらせ。ものすごい執着だ。
恋人同士ならともかく、相手はクラウスに逆らえない立場の、困窮した少女なのに。
だがクラウス本人は好意100%なのである。