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【血界戦線】紳士と紅茶を

第2章 告白(上)



 けど気圧(けお)され、私は壁まで追い詰められる。
 クラウスさん、私が逃げられないよう、壁に手をつき、

「私のしたことが、君の矜持(きょうじ)を傷つけたというのならば! 私は全力で詫びよう!
 だが今は! 君の! 安全を確認することを! どうか許してほしい!!」

 耳痛ぇ! 壁がビリビリ震えてる!
 クラウスさんの大声で鼓膜がどうにかなりそう!

 だが彼は沈痛な面持ちでうつむく。
「……幻術と結界で事足りたと思っていた油断が、君に苦難を強いた。全ては私の慢心だ」
 えーとクラウスさん、何か後悔してるのかな。

 もしかして私が侵入者にちょくちょく殺されたり、侵入者に×××(自主規制)されてから殺されたりしてたのを、面倒だから言わなかったこと?
 どうしてバレたんだろ。

 しかし私が何を言おうが、クラウスさんは私がスマホを受け取らないと、何が何でも引かないっぽい。
 最後に折れたのは私だった。

「分かりました……分かりましたよ」
「カイナ!」
 クラウスさんの顔がパッと明るくなる。
「でも、今まで援助いただいた分とスマホの貸与代。いつか必ず全額お返ししますから!
 ギルベルトさん。私が将来返す分のお金、計算しといて下さい!」
「かしこまりました。カイナ様」
 ギルベルトさんが丁寧に辞儀をした。そして主人に、
「坊ちゃま。本社の方で皆様がお待ちです」
 するとクラウスさんもようやく我に返ったように、ネクタイを締め直す。
 そしてギルベルトさんからスマホを受け取り、私に差し出した。
「受け取ってほしい」
「……あの、手紙とかじゃ、駄目っすか?」
 最後の抵抗で恐る恐る言った。
「カイナ……」
 悲しげな目に、完全に折れた。

「……ありがとう、ございます」

 そしてクラウスさんは車に乗り、会社に帰っていった。
 もう時刻は夜半だというのに。
 去りゆく車に手を振りながら、私の手の中には最新スマホ。
「そのうち返すんだから、なるべく触らないようにしないと」
 と、大事にふところにしまおうとしたら、いきなり着信音が鳴り、ビクッとした。

 画面には電話のアイコンと共に『Klaus V Reinherz』――クラウスさんだっ!!
 早速!?

「は!? え、え、えーと! 電話を取るって、ど、どうするんだっけ!?」

 パニクった。 
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