第2章 告白(上)
疑問点をスルーすることにして、テントの外をうかがう。
クラウスさんはというと、すっかりいつもの様子に戻り、テントの外にダンボールの箱を積み上げていた。
「何ですか、それ?」
「ギルベルトがミネラルウォーターのボトルと、常温保存可能な食品のセットを持って来てくれた。
最低一日三袋、摂取しなさい。次に来たとき減った量を確認する」
そ、そこまで厳重にしなくとも。
「どうもすみません……あの、本当に、いつもありがとうございます……」
毎度毎度、自分の情けなさが嫌になる。
「気にしないでくれたまえ。私はこうして君の手助けが出来ることがとても嬉しい」
「…………」
キリッと言われ、顔が羞恥で赤くなる。
あー、もう情けないなあ、自分。
いい加減に施しを受ける立場から脱さないと。
この居心地のいいニート生活に染まってしまう(週三回ほど死んでるけど)。
劣等感で悶絶していると、クラウスさんのスマホが鳴った。
「私だ」
クラウスさんは誰かと仕事の連絡をし始めた。
でもすぐ電話を終え、クラウスさんはテントの入り口から、上半身だけ中に入ってきた。
それだけでテントが狭い。この前はよく二人で寝られたもんだ。
クラウスさんの(怖い)顔は少し曇っていた。
「カイナ。すまない。敵に関する重要情報が入った。
しばらくそちらに、かかりきりになりそうだ」
いや、別にあなたのお仕事の詳細は言わなくていいですが。
というかクラウスさんは貿易会社社長さんだって聞いたのに『敵』とは。
商売敵ってこと? 紳士なのに物騒な物言いだなあ。
それともこれは遠回しに『もう来れない』と言われているのだろうか?
当然だ。私はあまりにもクラウスさんの時間を奪いすぎていた。
寂しいけど、いい機会。もう充分。
クラウスさんにこれ以上、迷惑をかけるわけにはいかない。
私は寝袋から出てきちんと正座し、クラウスさんに最後のごあいさつをすることにした。
三つ指ついて深々とおじぎをし、
『クラウスさん。こんな私のために今まで本当にありがとうございました』――と言いかけた直前。
「よって君にスマートフォンの貸与をしたい。
一日一度、私に電話で連絡してくれたまえ」
……は?