第2章 告白(上)
腕がおずおずと背中に回された。
あ。私の胸がもろに当たってるけどいいや。
紳士のクラウスさんが気にするとは思えないので、さらに身体を密着させた。
「……!!」
ん? クラウスさんが息を呑む音。そして心音がまた激しくなった。
見上げると、クラウスさんが汗をだらだら流し、顔を真っ赤にしていた。
「……クラウスさん! や、やはり心疾患の既往歴が!?」
ガバッと離れようとすると、
「い、いや、そのままで構わない!」
抱きしめられ、というか力が強すぎて、さっき同様に締め上げられる。
「気にしないでくれたまえ。すぐに収まるから」
「そ、そうですか……」
先ほどのように絞め殺そうとするほどの力ではないものの、少しでも動くと、クラウスさんの方へ戻される。
「いくらでも、甘えてくれて構わない。君がそうして私を信頼し頼ってくれることを、私はとても嬉しく思う」
「ど、どもです」
いちいち大げさだなあ。
しかし、相変わらずギルベルトさんは帰ってこないし、クラウスさんは私を放す気配がない。
しかも『すぐ収まる』と言いつつ、一向に強い鼓動が収まる気配がない。
うう。腕の適度な締め付けが暖かい。クラウスさんの身体、暖かい。
眠い。ぐぅ。
「……カイナ?」
私はクラウスさんの腕の中で、すやすやと眠ってしまった。
…………
…………
「ん……」
薄目を開け、ぼーっと上を見上げる。
最初は何も見えなかった。
「……?」
「――っ!?」
泡食った顔の紳士が、慌てて離れたのが見えた。
「し、失礼したっ!! 君が熟睡していたので、その、呼吸状態を確かめようと……!」
「はあ、それはどうも」
ほわほわした思考で応えた。
ボーッとし、身体を起こす。
私の仮住まいのテントの中だ。私は寝袋の中にすっぽり収まっている。
クラウスさんが連れてきてくれたみたい。
で、クラウスさんは、私の頭の両脇に手をつき顔を近づけ、私の呼吸を確かめていたと。
……呼吸って、そういう風に確かめるもんだったっけ?
分からんけど私の方が馬鹿なんだし、クラウスさんがそう言うのなら間違いはないんだろう。