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【血界戦線】紳士と紅茶を

第1章 出逢い


■Sideライブラ

 堕落王のもたらした災害の翌日。

 あれだけの犠牲者数にも関わらずヘルサレムズ・ロットのTV局は、またいつもの内容に戻っていた。
 ライブラにしても同じだ。昨日のことなど無かったかのように、業務と賑やかな騒ぎが繰り広げられている。

 事件は次から次へと起こる。 
 その中には宿敵たる『血界の眷属(ブラッドブリード)』が関わっている案件も含まれているのかもしれないのだ。
 我々は出来る最善のことをし、常に先に進まねばならない。
 すぐ切り替えられるようでなければ、とても世界など救えはしないのだ。

 だからそれは膨大な雑務に埋もれ、消えるはずの記憶だった。

「…………」

 だがクラウスは常より集中力を欠いた。

 婚約者が来るから心配無用、と彼女は確かに言ったではないか。
 彼女の安全は確約されている。
 ならこちらでこれ以上することはない。

 なのに。
 
 ……気にかかる。

 ガレキにもたれ、疲れ切った虚ろな顔で宙を見ていた少女。

 話しかけてからも、それは変わらなかった。
 終始怯えた顔でずっとこちらの反応を伺い、こちらが動くたびにビクッと小さな身体を縮めていた。
 ああいった惨事の後で神経過敏になるのは致し方ないかも知れない。
 だが本当にそれだけなのだろうか。

 戦場で幾度となく己を助けてきた『勘』が、警鐘を鳴らしていた。
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