第2章 告白(上)
ギルベルトさん、ギルベルトさん、ギルベルトさんーっ!!
私は内心で執事のギルベルトさんに助けを求める。
お願いします、有能執事さん、何か面白いことを言って空気を氷塊させて下さいっ!!
すると、タイミング良くギルベルトさんのスマホが鳴った。
「はい、何の御用でしょうか……はい、そうでございます」
ギルベルトさんは電話の相手と素早く連絡を交わすと、主人に深々と頭を下げた。
「大変申し訳ございません、坊ちゃま。本社にて火急の用事が出来てしまいました」
ああああ! ギルベルトさぁーんっ!!
「分かった。行ってくれ。ご苦労」
「許可いただき感謝いたします。お帰りまでには戻りますゆえ、しばしの不便をお許し下さい。では、カイナさん、坊ちゃま。また後ほど」
「お、お仕事ご苦労さまです~」
去って行く執事さんに『頼むー、行かないでー!!』と叫ぶが、ギルベルトさんは本当に去って行った。
後に残されたのは、すごく気まずそうな顔をしているクラウスさん……。
ん?
そこでギルベルトさんの言葉を思い出す。
「そういえばギルベルトさん、さっきクラウスさんのことを『坊ちゃま』って言いませんでした?」
「昔からそう呼ばれている。公的な場では名で呼ばれるが――」
ふーん。プライベート的空間では『坊ちゃま』とか呼ばれてるんだ。
ギルベルトさん、私をそういうカテゴリに入れてくれたのか。何か感動ー。
「……て、坊ちゃま……ってっ!!」
噴きだした。
「どうしたのかね? カイナ」
あかん。笑いがこみ上げる。成人して会社社長な、いい大人が坊ちゃまって!
「く……くくく……」
「カイナ!? 気分が悪いのか? しっかりしたまえ!」
「坊ちゃまって……! 坊ちゃまって!!」
もう無理だった。
笑いのツボに入ってしまった私は、本人の目の前で大爆笑してしまった。
…………
クラウスさんはちょっと傷ついていた。
「すみません。何かツボに入っちゃって」
冷静に戻った私は、(また)平謝りである。
「そこまでおかしいだろうか。ギルベルトは私が幼少の頃から慣れ親しんでいる間柄なので、呼称を改めさせることをしなかったのだが」
「おかしくはありませんよ。私も笑い過ぎちゃって……」
非礼を詫びつつも、こらえきれない私であった。