第2章 告白(上)
幸いそれ以上、食生活については触れられず、いつものお勉強タイムとなった。
「カイナ。何か分からない箇所は?」
「んー。自分で調べますです」
「そうか。調べても分からないことが見つかったときは、何でも聞いてくれたまえ」
「ありがとうございます……」
いつも以上に熱心なクラウスさんにちょっと引きながら、問題文を解いていく。
最初は簡単な問題にも四苦八苦だったけど、今はもう少し難しい問題にもチャレンジ出来るようになった。
んー。ここの空白に来るのは……。
「カイナ?」
うるさいなあ。一瞬、分かりかけたのに。なのでつい言ってしまった。
「あの、集中してるんで、ちょっと静かにしてもらえません?」
「……っ!!」
とんでもない失言をしたことに気づき、バッと顔を上げる。
『ガーン』
擬音をつけるなら、そんな感じの表情のクラウスさんがいた。
何というか、ものっすごいショックを受けてた。
「すすすみませんっ!! 申し訳ありませんっ!! お教え頂いている分際でっ!!」
高速で頭の上下運動をし、詫び続けた。
そもそもこの問題文、私のレベルに合わせ、クラウスさんが会社のお仕事の合間に作って下さったものだ。
それ以前に今日はクラウスさんの休日!
そんな日に、テント生活の小娘のため慈善で来て下さっていたのに! 何という恩知らず!
「座ってくれたまえ。私こそすまなかった。ギルベルト、紅茶を」
失意のクラウスさんは、しょんぼりしたクマさんを連想させた。
「ああああの、クラウスさん、ここ分からないので、教えていただいていいっすか!?」
「うむ。ここの主語は……」
あからさまにご機嫌取りな私に、それでも応えてくれるクラウスさん。空気がどよーんとしてるが。
ヤバい。超気まずい。どうしよう。怒らせた? 不愉快にさせた? 嫌われた? 頭が冷静じゃなくなる。
「次の問題は分かるかね? 最近の君はとても熱心だから、レベルを上げてみたのだが」
ヤバい。怖い。集中出来ない。問題文が震える。
「その、カイナ。分からないのなら無理に解かずとも……」
「いえ、頑張ります!!」
ペンを握る手が震える。
「そうか。それは良いことだ」
言葉とは裏腹に、あわあわと、焦った様子のクラウスさん。
私たちの間に流れる気まずさはMAXであった。