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【血界戦線】紳士と紅茶を

第2章 告白(上)



 私は恐れおののく。

「覚醒したクラウスさんは、目が合った者全てを消すでしょう。
 いつかはこんな日が来ると思っていましたが!
 ギルベルトさん、ここは私が引き受けますので逃げて下さい」

 拳をギュッと握ると、ギルベルトさんはかがんだままニコニコ笑い、

「カイナさんがクラウス様をどんな目でご覧になっていたか、少し分かった気がいたしますが。
 ですがカイナさんのご心配は杞憂(きゆう)です」

「マジですか?」
「マジですとも。クラウス様がカイナさんに危害を加えることはありません。
 さ、クラウス様がご心配なさっているので、カイナさんのお力で笑顔にしてさしあげて下さい」

 はーい。

 執事さんに立たせていただき、テントの後ろからそーっと顔をのぞかせる。

「その……カイナ……さっきは、その……」

 申し訳なさそうに身を縮めた紳士がいた。

 私はまだ警戒を解かず、テントの後ろからじーっと見つめる。
「すまない、カイナ。あれは君に対してではなく! 私は決して君を怯えさせる気はなく!」
 話しかけられ、ビクッとしてテントの陰に完全に隠れた。
「あ……!」
 と、クラウスさんが言うのが聞こえたが、今は身の安全が第一である。

「どうです? 怖くなかったでしょう?」
 一緒にしゃがんで隠れていたギルベルトさん。
「いえ、油断させるための罠の可能性があります。念のためもうしばらく様子を見ましょう」

「それは残念です。貴女のためにテイクアウトした、高級料理店のランチが冷め――」

「ようこそいらっしゃいました、クラウスさん!!」

 私はテントの後ろから飛び出し、クラウスさんのところに駆け寄った。
「カイナ!」
 ホッとしたような笑顔。両手を広げたクラウスさんの元にジャンプ!
 抱き留められ、ぎゅっとハグされ、笑みがこぼれる。

 ……何か距離近くないだろうか、私たち。

 前はもう少し一定の距離があった。
 クラウスさんは私を未婚のレディ扱いして、気遣ってくれた。
 何で普通にハグし合う仲になったんだっけ?

 テントで一晩、一緒に過ごしてからだ。

 顔から火が出るほど恥ずかしい。


 あの夜以降、クラウスさんの方から急に距離を詰めてきた。

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