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【血界戦線】紳士と紅茶を

第2章 告白(上)



「で?」とザップ。

「何がだ?」とスティーブンは返す。

「クソガキいじめて喜んでた変態クソ野郎共は、どうやってやられたんだ、スターフェイズさん。
 神性存在にしっぺ返しくらって、数千回死ぬくらい苦しんだんだろうな?」

 感情むき出しのザップと対照的にチェインは淡々と実験報告書をめくっている。
 だが苦しそうに顔をしかめ、結局十分の一も読まず止めてしまった。賢明な判断だ。

「報告書に書いてあるだろう。
『メビウスの輪』の壊滅原因は地元マフィアとの金銭でのいざこざだ」

「並行世界一つを生け贄に、と壮大な計画をぶち上げた組織が、あっさりしたもんで」

「壮大な計画には壮大な資金が必要だからな。
 メビウスの連中はマフィア相手に巨額の借金が出来てしまった。
 どうにか返済を引き延ばそうと頑張ったが、襲撃を受け全員が銃で即死」

 一旦言葉を止め、

「マフィアは唯一の海外支部――ヘルサレムズ・ロット支部に残党狩りに行っている。
 だが堕落王による被害で現地支部は壊滅。連中は一人残ってたお嬢さんを見つけた」

 全員が沈黙する。
 意味は充分に分かったのだろう。

「スティーブン……その話は報告書にない」

 低い、低いクラウスの声がする。それには応えずに、

「僕も個人的に調べていたからね。で、その、マフィアは彼女を拷問にかけ残党がいないことを確かめてから銃殺――まあ本人があの調子だから、これも蘇生の際に記憶を調整してるんだろう」
「スティーブン……!」

 怒鳴りそうなクラウスを押さえた。
「マフィアへの復讐も無駄だ。彼らも帰還前にヘルサレムズ・ロットの洗礼を受け、全滅してる」 

 復讐すべき対象は存在しない。

「クラウス。もうあの子には関わらない方がいい。
『あれ』が普通の少女、というのは表面だけだ。
 存在的にも精神的にも、とんでもない核弾頭を抱えている」

『不死』属性は感染するのか、神性存在との契約は本当に失敗に終わったのか――不確定要素が多すぎる。

 友人の肩を叩く。

「『牙狩り』本部に預けよう。あっちできちんと調べた方が良い」

「…………」

「君の口添えがあれば、あの子は人道的な扱いを受けるだろう。この街で人知れず惨殺されることもなくなる。だから――」

「断るっ!!」
 
 轟音とともに、クラウスの拳でデスクが真っ二つに割れた。

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