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【血界戦線】紳士と紅茶を

第2章 告白(上)



 深夜のライブラ本部ビルディング。
 そこにクラウス、スティーブン、ザップ、チェイン、ギルベルトが集まっていた。

「別におまえらは帰ってもいいんだぞ」
 スティーブンはザップとチェインに言う。
「チェインも彼女と面識はないだろう?」
 ただしチェインの方は少女を知っている。
 何度か監視に向かわせたことがあるのだ。
 ……行くたび高確率で死んでいて色々キツイと言われ、監視業務は中断となってそれきりなのだが。

「俺ぁヒマなだけっすよ。メアリもアンナもローザもみーんな客取っちまって、帰ってくんなって」
 調査書類をペラペラめくり、ザップが言う。
 それを害虫を見るかのような目で見ながらチェインは、
「ミスタ・クラウスの安全のためにも、知っておくべきかと思いまして」

 それを聞いたクラウスはじーんとした顔で身体を震わせ、
「君たち……そんなにもカイナのことを案じてくれるとは!」
「だまされるな、クラウス。こいつら完全に野次馬だからな。それに……」
 スティーブンは言葉を切り、報告書の束を叩いた。

「好奇心でうかつに読むもんじゃない。これは悪魔の所業の記録だ」
 
 
 …………

 夜空を見上げながら思う。

 よくある話だ。あるとき穴に落っこちるみたいに、自分の全てがどこかに行ってしまう。
『何で私だけ』と思いたくもなるけど、世界中、どこでも起こっている、ありふれた不幸だ。

 私は『組織』――神性存在との契約を企む魔導集団”メビウスの輪”にいた。
 そして彼らに並行世界から引っ張ってこられた。

 並行世界とは?
魔導や『血界の眷属』のいない、ヘルサレムズ・ロットの無い世界だ。

 私は彼らの世界征服の目的を叶えるため、この世界に召喚された。
 そして神性存在との契約により『不死』の属性を与えられた。

 以上。私に関する説明でしたー。
 ちょっと呆気なかった?

 では不幸要素を! 元々いた並行世界での記憶は大半が失われ、回復の見込みはありません!

 私は元の世界に帰れるのか!? 
 否。
 兆とも京とも垓(がい)とも言われる並行世界の中から、私が元々いた世界を探しだし戻るのは不可能!

 それくらいだろうか。

 ああ、あと一つ。私は『不死』の属性のため、あらゆる実験の材料となった。それくらい。


 ……あんまり大した不幸じゃないかも。

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