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【血界戦線】紳士と紅茶を

第2章 告白(上)



 今いるここを出て、一緒に来て欲しいと、クラウスさんにそう言われた。

「マジかよ~」
「クラウス! 本気なのか!?」
 銀髪はポカンとし、スティーブンさんは豆鉄砲くらったような顔をしている。
 するとクラウスさんは、

「本格的に生活を再建するのだから、改めて話をしたいだけだ。転居の検討も含めて」

 そういえば、この教会はクラウスさんの会社から離れているらしい。
 私に何かあっても、そう簡単に来れる距離ではないそうな。
 参考までに言うと、以前の私は週三回の頻度で死んでたが。

「うっわあ~。旦那。マジでこのチビを囲う気かよ!?
 こりゃ大スクープだわ! 上から下まで、大騒ぎするぞ~うおぁっ、冷てぇ!!」

 スティーブンさんに指先凍らされて悲鳴を上げ、のたうち回る銀髪。ざまぁ。
「分かった。細かいことは後だ。今は急を要する。君――お嬢さん、助手席に乗って! ザップは後から走ってこい!!」
「サラッととんでもないこと言ったっ!! 俺ぁ犬女じゃねえんだ、ちょっと! 蹴らないで下さいよ、スターフェイズさんんっ!!」
 無理やり座席から外(道路側)に蹴り出されようとし、全力で席にしがみつき抵抗する銀髪。

「カイナ。遠慮はいらない。来てほしい」

 クラウスさんも急かす。
 一緒にいられる、もっと話が出来る。
 温かい場所で寝ることが出来る。
 ここから出て、新しい生活を……。

 私は、教会の敷地からあと半歩で出かけて。

 …………。

 その足を戻す。

「私はここにいます。ここから出てはいけないんです」
 何度かしたやりとりだ。
 クラウスさんは、さらに厳しいまなざしになる。

「理由を聞かせてほしい。なぜ君は、親しい者も思い出も何もない『ここ』に縛られている。
 私と出会う前、君にいったい何があったというのだ」
 
 話すのも面倒なくらいどうでもいい、つまらないことしか。

 でもクラウスさんの目に怒りが混じる。
 彼らしくもなく手を伸ばし、私を力ずくで引っ張っていこうと――。

「怒られるから……絶対、だめ……」

 彼の手が触れる寸前に身体を引き、かすれた声でやっとそれだけ言う。

「ここを出たら、怒られるんです!!」

 きびすを返してテントの方へ全力で走った。

 クラウスさんが何か叫んでいたけど、それはもう私の耳に届かなかった。


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