第2章 告白(上)
「マジで!? 女と一晩寝て、マジで何も!? そいつがチビすぎて勃たなかったとか!? いや、もしかして旦那って不能――」
「ザップ。それ以上何かしゃべったら、おまえを氷漬けのオブジェにしてここに置いていくぞ!」
スティーブンさんの笑顔に、銀髪も黙り込んだ。ざまぁ。
あと人の家の前に銀髪の粗大ゴミを置いていかんで下さい。
一方、クラウスさんは二人が来てることに、目を鋭くする。
「スティーブン。何かあったのか」
「そんなこと言われなくとも君ならもう察しはついているだろう? 例の件だよ」
「そうか。やはり先方との交渉は――」
二人は真剣な顔で、何かを話し出した。
盗み聞きは良くないから、聞かないようにしたけど、どうも会社の急用みたいだ。
クラウスさんは今すぐ出発しなきゃいけないらしい。
「クラウス。すぐ行くから乗ってくれ」
スティーブンさんが言うと後部座席の扉が開いた。
ギルベルトさんが運転席から出てきて、私にスッと大きな紙袋を差し出した。
「ミス・シノミヤ。ささやかではございますが、お召し上がり下さい。中の別の紙袋は昼食になります」
「ギルベルトさん、どうもすみません。ありがとうございます!」
クラウスさんと一緒に食べられないのはすごく残念だけど、ずっしり重い紙袋に、私の見えざる犬尻尾がブンブン振られる。
さて、そろそろホントにお別れだ。
「それでは、クラウスさん。本当にありがとうございました。また――」
とお見送りしようとして、
「カイナ。出来れば君にも来てほしいのだが」
クラウスさんがまっすぐにこちらを見て言った。
「は?」
「この場所を出て、私と共に来て欲しい」
私を見つめる目は、夢の中でキスをしたときの目に、少し似ている気がした。