第2章 告白(上)
そしてやっと、クラウスさんのiPhoneが鳴る。
「ギルベルトが来たようだ。もっと君と話したかったのだが」
「お仕事ですから、仕方ありませんよ」
クラウスさんの後に続き、一緒にお見送りに行く。
幻術と結界の壁を越えるとギルベルトさんの車が見えた。
教会の外は、ヘルサレムズ・ロットの騒がしい街並みだ。
振り返ると、そこには立派な教会があった。
うわ。外から見ると、本当に教会が建ってるように見えるんだなあ。
たった今、テントを張っただけの更地から出てきたのに。
『魔術』のすごさを感じつつ、車の運転席にいたギルベルトさんに頭を下げる。
クラウスさんが帰ってしまう。
とても、寂しい……。
と。
「旦那ぁ~!! 女のとこから朝帰りっすかあ? ギルベルトさんが来たのにも気がつかないとか、いやあ、張り切ってますねえ~」
盛大に現実に引き戻される、下品な声がした。
助手席から、いつか見た気がする銀髪のチンピラ……もとい、クラウスさんの部下のザップさんがものすごい下品な笑い方をしていた。
「なあなあチビ、旦那のアレの具合、どうだった? てめえのちっけえ身体にちゃーんと全部入ったかぁ?」
「…………!」
こ、この野郎! 何の勘違いを! マウント取ってタコ殴りにしてえ!
「ザップ、セクハラ発言は止めないか。それに上司のプライベートをどうこう言えた生活態度か、おまえは」
後部座席にはスティーブンさん。
こちらも何か勘違いしているような……。
「ザップ。何の話かね?」
クラウスさんは不思議そうな顔。
「カイナは非常に知的好奇心あふれる女性だ。
誰かと文学についてこんなに語り合ったのは久しぶりだ。とても有意義な時間だった」
や、止めて!! 本人の目の前で褒める公開処刑止めて!!
あと語り合ったというか、あなたが自分の好みの本について延々と語っていただけですから、あれ!
……まあクラウスさんは性格的に聞き専だろうから、誰かに好きなだけ話を聞いてもらう体験が新鮮だった可能性があるが。
「え。旦那。マジでそいつに何もしなかったの?」
銀髪があんぐりと口を開けていた。