第2章 告白(上)
――という夢を見た。
「うわあああっ!!」
ガバッと起きると、テントの中には私だけだった。
クラウスさんは!?
キスする夢を見た気がするけど、現実じゃないよね!?
慌ててテントの外に走り出ると、
「どうした、カイナ。おはよう」
クラウスさんがタオルで顔を拭いていた。
持参したミネラルウォーターのボトルで顔を洗ったみたいだ。
「おはよう、ございます……」
「これは君が使いたまえ」
「ども」
クラウスさんが、私に一本ボトルを差し出した。
何か普通だなあ……。
別に全然変わった様子は見られない。
やっぱ私の痛い夢だった?
「どうした?」
「い、いえ別に!」
私もボトルをちょっと口に含み、それから顔を洗う。
あー、さっぱりする!
「ギルベルトがもうすぐ来るから、それまで朝食は待っていてほしい」
「ど、どうも……」
改めて思い出し、顔から火が出るほど恥ずかしい。
クラウスさんをクマと勘違いした挙げ句、キスをするという、意味不明な夢を見た。
やけにリアルな夢だった気がするけど、あれは絶対ない。
クラウスさんは貴族の慈善で、私を気にかけてくれてるだけだもの。
頭を冷やそうと、ボトルの水でばしゃばしゃ顔を洗う。
クラウスさんはそんな私を笑顔(怖い)で見ていた。
そして簡単に身支度を調え、二人してギルベルトさんが来るのを待つことになった。
ただ手持ち無沙汰だし、朝から勉強はさすがにキツイ。
なので、話は自然と昨日の続きのことになった。
クラウスさんが、スマホで電子書籍を何冊か読ませてくれる。
「小説はまだハードルが高いですね。難しい単語も多いし」
「なら詩はどうだろう。簡潔な言葉の中に、奥深い世界が詰め込まれている」
「いやポエムとかそういうのはちょっと」
「なら有名な詩だけでも聞いてみないか? よければ君の感想を聞かせてほしい」
「あ、まあ詩なら短いですし。ならちょっとだけなら」
「イェーツによる『イニスフリーの湖島』という詩はどうだろうか。
I will arise and go now, and go to Innisfree...」
クラウスさんの語る話が面白くて、また引き込まれ、時間を忘れて話し込んでしまった。