第2章 告白(上)
「ん……」
ぼんやりと薄目を開ける。夜明けだろうか。
黎明の淡い光がテントの幕を通して入ってくる。
この時間はいつも凍えるように寒い。
なのに今日は、いつもと違って温かい。何でだろうと思い、誰かに抱きしめられていると気づく。
……デカい。とんでもなくデカい何かがそばにいる。
離れようと身じろぎすると、ギュッと抱きしめられた。
ん~。
あと枕固い。何なんだ。
じたばたし、結局逃げることかなわず、くたっとする。
すると余計に抱き寄せられ、ぎゅーっとされた。
眠い。温かい。ぎゅっとされてる。
私は夢と現実の間を行き来する。
でも自分を拘束するドデカい何かの正体を確かめるべく、そっと目を開けた。
うわっ!!
超怖い生物が目の前にいた! 口から牙が生えてるからクマに違いあるめえ!! 枕が固いのも当たり前でクマの腕だった!!
「起きたかね、おはよう、カイナ」
クマが私の髪を撫でた! 食われる前兆だ!!
「いえ死んでます。これからクマに食べられて……」
寝起きの頭のまま、ボソボソと言うと、含み笑いの声。
「クマとは私のことだろうか。私が君を食べてしまうのかね?」
「クマ恐ろしいです。もう、逃げられません。さよなら……」
一向に働かない頭で、自分でも意味不明なことを口走る。まだ三十六時間は寝ていたいなあ。すると笑ったような声が、
「カイナ。そんなことを言わないでほしい。さあ起きたまえ」
目をしぱしぱさせ、クマさんを見上げる。私を見下ろすまなざしは、柔らかくて優しい。
ぼんやりとクマと見つめ合って。
そして、どちらが先に動いたのだろう。
ふっと。自然に。唇が重なった。