第2章 告白(上)
かくてクラウスさんとテントで一夜を明かすことになった。
う、うーん……。
身じろぎすると、
「眠れないのかね」
クラウスさんが声をかけてくる。せめて先に寝てくれればいいのに、まだ起きてるし。
午後を丸々私の相手に費やし、夜は怪物と戦って。普通は疲労で爆睡するでしょうが。
「まあ。その、普段は寝ない日も多くて……」
「それは、君の不死の能力によるものなのか?」
「そういうわけでは……でも寝なくて死んでも問題ないし」
『組織』によって、寝ないように『訓練』された。
おかげで今は立派な睡眠障害だ。
「死ぬことを止めたのなら、君は普通の少女だ。夜は睡眠を取ることを推奨する。
今夜はもう心配はいらない。私がついているから、安心して寝てくれたまえ」
クラウスさんはキッパリ言う。
いや、今眠れないのは明らかにあなたのせいですけど!!
今の彼は眼鏡やベストやネクタイを外し、毛布を出来るだけ私の方にかけ、自分はテントから足がはみだしかけながら横になってる。
何だかなあ。落ち着かない。心がザワザワする。
「なら、君が眠くなるまで話でもするとしよう」
私は子供か!!
けどやっぱそういう扱いなんだなあ、と内心ため息。
そしてその後は、クラウスさんの話を聞いていた。
…………
時間が経っても、クラウスさんはしゃべるしゃべる。
最初は『ためになる聖書の文言』みたいな話だったけど、だんだんジャンルが変わってきて、オススメの詩だの小説だの、感動した文学作品だのといった話が延々と続いた。
この貴族、教養の塊のため話の引き出しがとんでもなく広い。
しかも普通に本文を暗記してるという、恐ろしい記憶力。
私はひたすら『聞いてうなずく係』だった。
でもクラウスさんは私がうなずくと、嬉しそうにどんどん語ってくれる。
でもついに、私の体力の限界が来てしまった。
クラウスさんも気づき、
「話しすぎてしまったようだ。今度君に本の差し入れをするとしよう。もう寝なさい」
「いやです……話の、続き……」
うう。クラウスさんの話の続きが気になるのに、まぶたが上がらない。けど寝袋に倒れ込む。
クラウスさんは毛布をかけなおしながら言った。
「君と話すのはとても楽しい。出来ることならいつまでも話していたい」