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【血界戦線】紳士と紅茶を

第2章 告白(上)



 そしてテント周辺をどうにか片付け、寝場所だけは確保した。

 クラウスさんはギルベルトさんに電話をしている。
「――そうだ。問題はないとスティーブンへ。車は明朝に」
 連絡を終えスマホを切る。そして私を振り返り、
「君も疲れただろう。そろそろ休もう」
 
『私のことは気にせずお帰りになって下さい』
 と本当は言いたい。

 けど、霧はまだ薄れておらず生還率も横ばいらしい。
 クラウスさんについていてもらうしかない。
 ならせめて。

「どうかテントを使って下さい。本当にありがとうございました。おやすみなさい」

 クラウスさんに頭を下げ、その場でゴロンと横になった。
 あー、疲れた。でもクラウスさんがいてくれるなら安心だ。
 眠い眠い。久しぶりにちゃんと眠れそう……。

「……カイナ。君が何をしているか聞いてもいいだろうか」

 低い声が聞こえ、目を開けた。もう。せっかく寝かけてたのに。
「寝ようとしておりました」
「どこで?」
「ここで」
 テントの外の草地の上。
「それと以前に君に贈った寝袋が、テントの中に未開封状態で置いてあるのが見えるのだが」
「はあ。もったいなくて開けられなくて」
「……なら今までずっと、直で寝ていたと?」
「ええ。暖かい日は外で」
「…………」
 クラウスさんのガクゼンとした表情に、ハッと気づく。
 なので親指立てて片目をつぶり、ドヤ顔で言った。

「大丈夫です! 外で寝たくらいでは死にません!!」
 
 …………

 …………

 眠れない。身体は珍しく『寝たいー』と言っているのに眠れない。
「すまない、カイナ。私の身体のせいで、迷惑を……」
 クラウスさんは、私のためにどうにか場所を空けようと、狭いテントの中でもぞもぞしては、失敗に終わる。
「君にもう少しまともな住居を提供していれば……」 
 とやはりすまなそう。
 
 どういう状況かと言うと。一人用のテントに身長2メートル超えの大男と、小娘が無理やり並んで寝てた。

 何でこうなったかというと、
『私が外で寝る』『いえいえ私が』という不毛な争いを繰り返した結果でのことである。
 
 くっそ。クラウスさんがデカいせいで、二人してぎゅうぎゅうに密着してる。

 眠れるか、こんなの!

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