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【血界戦線】紳士と紅茶を

第1章 出逢い


「もちろんです! 彼を待っていただけですので、ご心配なく!」
 大嘘であるが、このでっかい人に絡まれるのは正直怖い。
「分かりました。ですが、この教会はいつ崩壊するか分かりません。
 出来ればもう少し離れていた方がいい――それで、あなたは教会にお勤めの方ですか?」
 そこで気づく。
 この人の服のあちこちにある十字のモチーフ。
 何だ。この教会と同じ宗教の人か。同じ信仰者を心配してくれたのか。
 過剰に警戒した自分が少し気恥ずかしくなった。
「いえ、正式なメンバーではなく、清掃や雑用係です。
 あ、ご心配なく。神父様や他の方は全員、避難したから無事だと思います」
 これも大嘘であるが。
「そうですか。それを聞いて安心しました」
 赤毛の紳士はやっと笑顔になった。笑顔も怖いが。
「いやあ、世の中良い人もいるものですね! ではお元気で――」
 だが紳士の言動にはまだ続きがあった。
「災害の後で、今はいつも以上に治安が悪い。
 よろしければ、あなたのご婚約者が来られるまで、そばにいましょうか」
「いえいえいえいえ! 結構っす! えーとですね!
 婚約者の彼、超嫉妬深い人っすから!! その、あなたがいられると――」
「ならば私の連れの者を。彼ならば、そのような誤解を招く恐れも不要かと」
「いいっす、いいっす!!」
 だから何でそこまでしつこいの。
 つか『連れの者』って後ろに控えてる執事っぽい包帯じいさん?
 この人ら、何なのマジで!
「クラウス様」
 けど、その執事さんが来て、何かヒソヒソと主人の耳元でささやいた。
 すると、やっとその赤毛の大男さんも引いてくれた。
「では、私はこれで。長いことお邪魔をいたしました」
 私はホッとして、肩を落とす。
「いえ、こちらこそ、すみませんでした。えーと……」
 あれ、この人、名前なんだっけ。すると大男さんはハッとし、恥ずかしそうに、
「クラウス・フォン・ラインヘルツと申します。ミス・シノミヤ」
『フォン』が、名前に入るのは、貴族階級の人ってことだっけか。
 なら紳士らしい物腰にも執事さんの存在にも納得だ。

 ……いや納得出来るか。この街に一番合わない人種でしょ!!
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