第6章 悪夢の後日談
やっぱり。好き。クラウスさんが大好きだ。
何も分からずに、ただ奥を貫かれる感覚だけがある。
それだけでもう、愛おしいし嬉しい。
「クラウスさん……もっと……もっと……っ」
婚約者の太い腕にしがみつき、泣きながら噛みついた。
すると今度は獣の方がビクッと震えた。
「……っ……君は、本当に、…………な子だ……」
首筋や耳元に口づけながら、何を言ったのだろう。
でも、もうどちらも限界だった。
「クラウス、さん……も……ダメ……!」
「…………っ……!!」
そして同時に絶頂を迎え――私は脱力し、力強い腕に支えられた。
キスしたいなあ。
チラッと振り向くと、すぐに意志は伝わったようだ。
すぐに私の願いは叶えられたのだった。
クラウスさんの腕の中でようやく眠りに落ちる寸前、窓の外に夜明けの灯りが見えたのだった。
…………
…………
その夜。ケダモノが焦っていた。
「カイナ。私の愛しい人。是非この花束を――」
赤いリボンでまとめられた、可愛い花束。
普通の女なら、喜んで受け取るのだろうが。
「黙れ」
そう退けたものの、私はグッタリしてソファに横になってるしかない。
「その……昨夜のことは本当に、その、何というか……」
出勤予定であったのに、結局出られる体力ではなく昼過ぎまで爆睡していた。
朝、クラウスさんが恐る恐るという感じで、私のスマホからスティーブンさんに連絡を取っていた。
『分かっていたから、大丈夫だよ』
と、冷めた声がスマホの向こうから確かに聞こえた!!
「どうか許してほしい。ギルベルトが庭園で紅茶と茶菓子を用意していて――」
「歩けないから、抱っこしていただけます?」
「心得た!」
ケダモノの顔がパッと明るくなったのであった。
…………
…………
「次の日、仕事があるときはもう少し抑えて下さい」
「うむ、心得た」
「私とクラウスさんの体力は違うんです。そこのところを把握した回数をですね」
「全くもって、その通りだ」
……話、本当に聞いてるのかなあ。
ギルベルトさんが早々に家に引っ込んだため、私は庭園でクラウスさんに説教していた。
バキッと私の口の中でチョコチップクッキーが砕けた。