第6章 悪夢の後日談
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私はソファでうつ伏せになり、グダっていた。
「何でだー正義は死んだのかー」
私たちの戦い? 私が3秒で負けましたが、何か?
分かっていたが実戦経験とか、その他もろもろ能力に圧倒的格差がある。
というかクラウスさんが規格外すぎる。
あれ本当に人類なのか?
で、あの後は家に連れ戻され、ベッドに引きずり込まれ全部うやむやになってしまった。
「理不尽だー。なぜ性犯罪者がのうのうと生きていて、被害者が泣き寝入りしているー」
私がなおもブツブツ言ってると執務デスクの方でガタッと立ち上がる音。
「カイナ。君の知人に不幸でも? 是非とも私に話してくれたまえ!
世に卑怯者をのさばらせてはならない。その女性の名誉のために、私は喜んで戦いに身を投じよう!!」
「あ、うん……」
”卑怯者”が何か言っているぞ。
オフィスの皆も、ツッコミを放棄してそれぞれの仕事をしていた。
心配そうに寄ってきたクラウスさんに、
「いえ、お構いなく……あ、それとこの書類の受諾をお願いします」
虚ろな声で、クラウスさんに書類を差し出した。
するとクラウスさんはそれを受け取り、一瞥(いちべつ)すると、
「了解した――ギルベルト」
「はっ」
ギルベルトさんはうなずき、クラウスさんから丁重に書類を受け取ると、どこぞに消えた。
一直線に隣室のダストボックスの方向に。
「彼が適切に処理するから心配しないでくれたまえ」
『婚約破棄』の通達書類なんだけどなー。
なおもソファでいじけてると、デスクの方から、
「まあまあ。君の記憶喪失も元に戻り、ギルベルトさんも帰ってきて、平和が戻ってきて良いことじゃないか」
相っっっ変わらず他人事だなあ、番頭!!
「おらチビ、寝てないでとっとと行くぞ! 聞き込みだ」
「うわあ~」
襟首つかんでザップさんに引き上げられた。
クラウスさんは、
「カイナ。今夜のディナーまでには帰還を」
知るか。
でも引きずられながら手を振る。
それを見て、婚約者はぱっと顔を輝かせた。
「気をつけて!」
「はーい」
遠くでは爆音、テレビでは新たな世界の危機の報道。
今日も私の婚約破棄作戦はかなわず、クラウスさんはクラウスさんなのであった。
――END☆