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【血界戦線】紳士と紅茶を

第6章 悪夢の後日談



 どうにか中に入れるまいとドアを押さえたが無駄だった。
 クラウスさんは気づきもせずにあっさりと中に入り、入り口で震えてる私を見つけると、
「カイナ!」
 今朝お見送りしたばっかなのに、半年くらい会ってないみたいなノリでハグされる。
 足が! 足が地面につかない!!

「き、今日は早いんですね。まだ昼間なのに」
 熱い熱い熱い。あと下ろせ!
「うむ。重要案件が片付いたので、早々の帰還がかなったのだ……会いたかった」
 
 てことは、激戦の後か。シャワー浴びて着替えたんだろうけど、ほんの少し火薬の匂いがする。
 こういうときって、気が昂ぶってるからヤリたがるんだよなあ……。

「わわわわ私もです。それはそれとして、ちょっと寝ますので」
「まだ夕方だが……夕食は?」
「少しおやすみして後で取ります。クラウスさんはお先にどうぞ」
「…………承知した。だが私も君が起きるのを待とう」
 と言いつつ、超不満そう。食事時間がどうこうではなく、私と過ごしたいらしい。

 でも嘘はついてない。連日の夜の事情で眠いのだ、私は。

「ならベッドに送っていこう」
「えー、いや別にいいです……」

 そう言ったけどもハグされたまま、ベッドに連れて行かれる。足が地面につかないから連行されるしかない。
 でも紳士的に両腕でそっと優しく横たえられた。
 今日はちゃんと寝かせてくれるのかとホッとしたけども。

「カイナ……出来れば君と絆を深めるひとときを」

 なぜあんたも一緒に横になる。
 起きるのを待つって言った舌の根も乾かぬうちにっ!!
 こら抱きつくな、触るな、濃厚なキスをしてくるな!!
 覆い被さって私のシャツのボタンに手をかけたものだから、必死に手をつかむ。

「あの、クラウスさん。本当に休みたいんです。申し訳ないんですが、夜にまた――」
「……しかし……」

 眼鏡の向こうの瞳が、欲望と気遣いの間でせめぎ合っているのがうかがえた。

 よしよし、あと一押し。

「もうクラウスさん。おいたはダメですよ」

 私は人差し指で『めっ』とクラウスさんの眼鏡の縁を押し上げ、微笑んだ。

 瞬間に。

「カイナ……!」

 何でー!!

 ケダモノの欲望のゲージが振り切れる瞬間を見た。

 抱きつかれ、シャツに手をかけられたかと思うと胸もとのボタンが吹っ飛んだ……。


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