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【血界戦線】紳士と紅茶を

第6章 悪夢の後日談



 私は照れながら顔をそらした。

「い、いいですよ。あと、いちいち許可とかいらないですから……」

 頬に触れる大きな手に、少し顔を赤くする。
 この人に触れられると、心の奥底が浮き足立つ。嬉しいと感じる。
 もっと触れて欲しい、語りかけてほしいと願う。
 私、この人が大好きなんだなあ。

「だって私たち……婚約者、なんでしょう?」

 顔を真っ赤にしながら言うと、フッと笑う声。

「では私のしたいように――君を、抱きしめたい。この腕に閉じ込め、口づけを」
「…………どぞ」

「ありがとう、カイナ」

 そして大きな腕に抱きしめられ、温室の花々に囲まれ、夢のようなキスをされた。

 私は大きな胸にもたれ、うっとりと微笑む。
 でも夢の時間は長く続かない。

「もうすぐ私は行かねばならない。君と離れねばならない時間を思うと、この身が引き裂かれるようだ」
「私もです……」
 出来ればついて行きたいくらいなのに。
「君はどうか、この家で療養につとめて欲しい。
 君の快復と平安を、心から祈っているよ」
「……はい!」

 幸せすぎる。
 クラウスさんはもう一度私にキスをし、

「私の帰りを待っていて欲しい。愛しい人」
「はい」
 そう答えたのは言うまでもない。

 こんな紳士な人と別れようと思ってたとか、馬鹿じゃないのか自分。
 そう思いながら、優しい抱擁を受けたのであった。

「……それと、カイナ」
 少し間を置き、クラウスさんは言った。
「はい、何でしょうか」

 するとクラウスさんは恥ずかしそうに、

「今日の作戦行動が無事に遂行されたら……君から、わずかばかりの褒美を賜りたいと思うのだが、いいだろうか?」
 
 えーと。作戦が成功したら、ごほうびが欲しいってこと?
 私はまた顔を赤くし、こくんとうなずいた。
 
「もちろんOKですよ。ご武運をお祈りします」
 するとクラウスさんはパッと顔を輝かせ、

「ありがとう、カイナ。君は本当に天使のように純真無垢な人だ」
「もう。止めて下さいよ」

 照れながら、まんざらでもなくキスを受ける。
 幸せだなと思いながら。


 最高値まで上がった好感度が、その夜にドン底まで下がるとも知らずに……。
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