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【血界戦線】紳士と紅茶を

第2章 告白(上)



 かくて悪は滅び、怪物は退治され、警察によって運ばれていった。敷地には静寂が戻った。が。

「いいです、いいですって!」
「落ち着きなさい、カイナ。じっとして」
 クラウスさんは、私の腕に迅速に包帯を巻いていく。
 言うまでもないことだけど、私は最後まで何もせず、隠れていることしか出来なかった。
「あの、すみませんでした」
「君が気にかける必要はない。当然のことをしたまでだ」
 当然。
 そう言えること、それだけの力があることが、うらやましい。
「他に痛む箇所は?」
「ありませんです」
「感覚の変化は? 見当識に異常は?」
 細かいなあ。
「ないです、ないです。だからクラウスさん、あなたの応急処置をさせてください」
 私のかすり傷より、戦ったあなたの方がよっぽど重傷だろう。
 傷口を消毒し、包帯を巻く。
「ありがとう、カイナ」
「いえ……」

 何で私もクラウスさんもケガをしているのか。
 まず私。飛んできたガレキが私の腕をかすったのである。
 強いクラウスさんがケガをした理由は? 私でアル。
 ガレキは、本当は私の頭を貫通するはずだったんだけど、クラウスさんが粉砕してくれた。
 けど、そのせいでクラウスさんまでケガをしてしまった。

 別に放っておいても良かったのに。そうしたら私も無傷状態で復活して、クラウスさんもケガをしなかった。

 ただ助けられておいて、そういうことを言うのは失礼なので黙ってる。黙っているけど、クラウスさんがケガをしたことが、ただただ申し訳ない。
 そんなことを悶々と考えていると、

「カイナ。一ついいだろうか」

「はい?」

 私の表情をずっと見ていたクラウスさんが言う。

「頼む。死なないでほしい」

「は?」
 もしかして顔に出ていたと内心慌てる。
 ケガまでして助けてくれた、クラウスさんの心情を害したに違いない。
「あ、あの。すみません……別に迷惑とかそんなでは……た、助けていただいたことはすごく嬉しく、ただ、その……」

 しどろもどろになっていると、クラウスさんが続けた。

「カイナ。不死の力は君の持つ能力だが、決して君の全てではない。
 君という存在を構成するただの一部でしかないのだと、どうか分かって欲しい」

 いやよく分からん。
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