第6章 悪夢の後日談
……ん?
身体に違和感を抱き、暗闇の中で薄目を開ける。
窓の外は暗く、夜明けは遠いようだ。薄明かりを頼りに時計を見ると、まだ寝て三十分しか経ってない。
ついでに言うと記憶状態にも変化は無い。
緊張してるのかな。寝直そう。
そのまま目を閉じようとして、
「――っ!?」
固まった。誰かが服の上から私の胸に触れている。
パニックに陥りかけたが、一緒のベッドに寝ている人がいたのを思い出す。
クラウスさん……?
彼が私の背中側から手を回し、私の胸を愛撫している。
大きな手でつつみ、緩やかに力を入れてる。
首筋に吐息を感じる。
「カイナ……」
い、いや。待って待って。許可が無いと触らないって言ったのに!
てことは、クラウスさんも寝ぼけてる?
今の声も寝言っぽかったし……。
なら離れればいいか。もし相手を起こしちゃったら、トイレに行こうと思ってとか、言い訳すればいいんだし。
私は羞恥に頬を染めつつ、そっと離れようとした。
「!!」
ガシッと抱きしめられた。さながら幼児が、お気に入りのぬいぐるみを取られまいとするように。身体を動かせない。
そしてさっきより、少し強く胸をつかまれる。
「…………っ」
思わず声が出そうになり、とっさに押さえた。
え。待って。別に声出してもいいんじゃね?
でも言い出しにくいというか、恥ずかしいというか……。
「…………っ」
手が私のパジャマから離れ、ホッとする。
ちょっと怖かったけど、これでやっと安眠出来そう。
心を落ち着け、やっと眠ろうとすると――。
「……!」
クラウスさんの手が、直接肌に触れた。
服のすそから、手が忍び込もうとしていた。
待って待って。ヤバイヤバイヤバイって。
起こさないと。クラウスさんを起こさないと。
……ヤバい。身体がガチガチになって動けない。
そ、それにクラウスさんは寝ぼけてるんだし、私の勘違いなのかも。
向こうは単に、枕に抱きついてる感覚なのかもしれない。
下手に騒いだら『いやらしいことをされる!』と身構えてる自意識過剰女っぽくね?
……もう少し我慢すれば、クラウスさんも熟睡して止めてくれるかも。
私は寝たフリをする。
目を閉じて、大人しく耐えることにした。