• テキストサイズ

【血界戦線】紳士と紅茶を

第6章 悪夢の後日談




「ここ、私の部屋……だよね?」

 しばらく歩き、自分のネームプレートがある部屋を見つけ、恐る恐るドアを開いた。
「おおおおっ!!」

 広い!! 家具がご立派!! 掃除が行き届いておる!!
 感嘆の声を上げ、室内を見て回る。

「……木彫りのクマ?」
 あちこちに木彫りのクマだのクマのぬいぐるみだの、クマグッズが置いてあるのが気になるなあ。
 テディベアコレクターはよくいるけど、木彫りのクマコレクターとかマニアックだなあ私。

「うーむ」

 大事に飾られたアンティークテディベアをなでなでし、部屋をさらに散策する。
 壁には魔術関係の本がびっしり並んでた。
「そういえば私、術士でしたっけか」
 しかし本棚を見ても何も思い出せない。
 
 自分の物を見れば何か思い出せるだろうかと、ベッドサイドチェストの引き出しをそっと開けた。

「…………」

 え。

 特注サイズの……ゴムの……箱が……開封済みで……半分くらい無くなってて……未開封の物も何箱も……。

 硬直した私の横で、誰かがすっと引き出しを戻した。

「あ……っ!」

 く、クラウスさんだ。
 私は凍りつく。
 勝手に席を立ったこと、怒ってないかな?
 それとゴムがあったってことは、やっぱり私、この人とそういう関係なの!?
 そらそうだよね。婚約者なんだし。
 やっぱエッチしなくちゃ駄目なの!?
 てか『入る』の!? 特注サイズなのに!?

 ガタガタガタガタと小刻みに震えていると、クラウスさんは咳払いした。怒っている様子は見られない。

「カイナ。その、少し座って話そうか」

 私はカクカクと首を上下させた。

 …………

 ソファの隅っこで身を縮めていると、いい香りが鼻腔をくすぐった。
 顔を上げると、テーブルに、小さなケーキと紅茶が乗っていた。

 クラウスさん、紅茶も淹れられるんだ。

「ギルベルトの腕には及ばないが――どうぞ」
「あ、ありがとうございます」

 頭を下げ、ティーカップを手に取った。恐る恐る真っ白な陶器に口をつけ、紅茶を飲む。

「美味しい……!」

「そうかね? ケーキも食べるといい」

 クラウスさんはちょっと嬉しそう。なので私もうなずき、ケーキフォークを手に取った。

 …………。

 あの、じっと見つめるの、止めてほしいんですが……。

/ 498ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp