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【血界戦線】紳士と紅茶を

第6章 悪夢の後日談



 ギルベルトさんはスマホをスッとしまうと、

「ベイツメイド長に連絡をいたしました」
「は?」

「カイナ様のご出産まで身の回りのお世話をさせていただくため、荷物をまとめているとのことです。
 到着まで、しばしのご不便をお許し下さい」
「ギルベルトさんんんっ!?」

 だがクラウスさんは満足そうにうなずいている。
「うむ。そうとなれば何よりも、ギルベルト――」
「ご安心下さい。式場はすでに押さえてございます」

 あかん。この主従、本気だ!

 薄情なライブラメンバーめ。誰も助け船出さないし!!

 ヤバイヤバイヤバイ。今、火を消さんと、大変な大火事になるっ!!

「冗談! 嘘ですから! イッツアジョーク!!」

 ようやく叫ぶことが出来た。

 するとクラウスさんがピタッと止まる。

 だが甘かった。

「心配はいらない。カイナ。嘘ならば真実にすれば良いだけのこと」

「……は?」

 クラウスさんがガシッと私を抱きしめ、抱え上げる。

「ドレスだけは君が選ばねば意味がない。式場の下見に行こう」

 お、おかしい。コトがトントン拍子過ぎる。
 まさかクラウスさん。最初から嘘ってちゃんと分かってて……?

 私は助けを求めてライブラの事務所を見たが。

「ヒマだなー」
「ヒマねー」

 誰一人私を見ていなかった。誰一人っ!!

「さあ行こう、カイナ!」
「いーやーあーっ!!」

 そして私の悲鳴が闇に溶けていった。

 …………

 …………

「カイナ、カイナ」

 誰かに揺さぶられ、ハッと目が覚めた。

「あれ……?」

 ハッと起き上がる。

 ここはどこ? 寝室のベッド。時間は夜だ。

「ゆ、夢オチか……」

 安堵にハーッと息を吐いた。
 一方クラウスさんは心配そうに、

「ずいぶんうなされていた。どうしたのだ? もしや、何か懸案事項でも?」
「いえ、変な夢見ちゃって。私が妊娠三ヶ月だと――」

 あ。

 ハッとしたが遅い。

「いや違う違う違うから、夢の話!!」
「三ヶ月……? 君が……?」

 呆気にとられたクラウスさんの顔が、みるみる喜びの色に染まり、

「大変だ! すぐ本国に打電を! ギルベルト!!」
「違うーっ!! 止めろぉーっ!!」

 そして深夜の大騒ぎが始まったのであった。


――END☆

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