第6章 悪夢の後日談
■しらばっくれた話
某日。ヒマだった。
その日、私は病院で定期診断を受け、帰ってきた。
そして事務所の扉を開けた。
クラウスさんとスティーブンさんは紅茶片手にお話中。
私に片手だけ上げる。
私も軽く頭を下げ、ソファに向かう。
「おかえり」
ソファでは作業中のチェインさんがいた。
「何か異常あった?」
なので私はお腹に手を当て、
「ええ。三ヶ月でした♡」
「そうなんだ。これから大事な時期だねー」
うあ。思い切りジョークを外した。内心焦っていると。
ガシャン。
「ん?」
音の方向を見ると、クラウスさんがこちらを凝視し、立ち尽くしていた。
足下には割れたティーカップとこぼれた紅茶。
「そ……それは……」
「どうしました、クラウスさん?」
「それは、本当なのかね、カイナ!!」
ものすごい声だった。
なワケないだろ。検査に行ったの外科だし!
「あの、クラウスさ――」
「カイナっ!!」
「ぐはっ!!」
昼間のオフィスだというのに、抱きしめられた。
潰す気か!! 厚みが半分になるかと思ったわっ!!
「ちょっとちょっとちょっとっ!!」
助けを求めて周囲を見るが、全員視線をそらした。
スティーブンさんは珈琲を飲んでる。
「いや今のはジョー――」
「ギルベルト!!」とクラウスさん。
「本国への打電、完了いたしました」
そつなく一礼するギルベルトさん。
「早っ!! いやそうじゃなくて――」
「おめでとうございます、カイナ様。クラウス坊ちゃまについに御子が……これほど嬉しゅうことはございません」
ハンケチで目がしらを押さえるギルベルトさん。
「いや、ちょっとギルベルトさ――」
だがクラウスさんのスマホの通知音が鳴る。
オロオロしてる間にクラウスさんは通話していたが、電話を切ると照れくさそうに、
「両親から祝いの言葉をいただいた。私にもしっかり妻を守れと」
マジか!
「それともし君が出産までラインヘルツ家に滞在したいのなら、一族を上げて大歓迎するという伝言も……」
「いやいやいやっ!!」
何だってクラウスさん不在の義実家で――じゃない!!
「いかないですよ! ここにいますからね、私!」
するとギルベルトさんがスマホを出し、どこかに連絡を取り出した。