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【血界戦線】紳士と紅茶を

第6章 悪夢の後日談



「俺……クラウスさんの技名叫んだだけじゃん……」

『神々の義眼』の出番もなく立ち尽くすレオナルドさん。
 しかし彼はまだマシな部類である。

「俺ら、いらなくねえ?」
 ポケットに手ぇ突っ込んで葉巻をくわえ、ザップさんが言う。
「ですね……」
 とツェッドさん。二人ともヒグマ無双の前に自慢の武器を使う機会も無く突っ立ったままであった。
 ちなみにスティーブンさんは最初から不在。

 そしてクラウスさんが、クルッとこちらを振り返り、大股に歩いてくる。

 シャーっ!!

 私はレオナルドさんの頭の上で威嚇。

「あのカイナさん……爪立てないでもらえます?」

 だがクラウスさんはどんどん近づいてくる。

 うわ。クラウスさんにパクッと首筋くわえられた!
 口からダラーンと子猫をぶらさげ、クラウスさんはご機嫌でライブラのビルに向かう。

 くっそー! 早く治れ!!
 クラウスさんなんか大嫌いっ!!

 子猫は怒りの声を上げたのだった。

 …………

「あーん! 可愛いっ!! 可愛いに可愛いが重なって可愛いの二乗だわ~」
 もはや語彙力の崩壊したK・Kさん。
 シャッター音がうるさいんで、写真撮りまくるの勘弁して下さい。
 
 そう思いつつ、子猫はクラウスさんの背中で丸くなる。
 今日は珍しく霧が薄いので、窓からは淡い陽光が差し込んでいる。
 ゴロゴロゴロゴロ。
 丸くなったクラウスさんの背中で、さらに丸くなり子猫はおやすみ中。

「戦闘力は数倍になったが、やはり早く元に戻ってもらわないとダメだな」
 横で報告書を作成しながら、スティーブンさん。

「通常の血闘術ならいいですけど、999式だけはクラウスさんがちゃんと言わないとダメですしね」
 私の背中をちょいちょい撫でるレオナルドさん。
 うむ。諱名(いみな)込みの最終奥義は、さすがに他人が叫ぶわけにもいかない。

「お嬢さんはともかく、クラウスには早く戻ってもらわないとな」
「そうですね、カイナさんはともかく」

 おまえら、そこまで私は不要か!!
 クラウスさんがそこまで大事かー!!
 それなら戻らなくていいもん! ずっと猫でいてやるっ!!

 子猫は半分寝ながら、尻尾をてしてし振ったのであった。

 …………


 かくて翌日、クラウスさんは人間に戻った。

 皆、一安心である。

 が。

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