第6章 悪夢の後日談
くーくーくー。
子猫は暖かい毛皮に包まれ、安心しきって眠っている。
だがその安らかなる眠りを妨げるものがあった。
……ん。
何かにつつかれて、少し起きる。
何かデカくて危険なものに攻撃されている気がする。
身を守らねば!!
勇敢な子猫カイナさん。飛び起きて、ぶわっと毛を逆立て全身全霊をこめて威嚇した。
んん?
もっぺん、つつかれただけだった。
何ごと?
周囲をよく見ると、どデカいクマのバケモノがいた。
よく見たら私、クマのバケモノの腕の内側にいる!
毛をぶわっとさせた子猫を面白そうに見、鼻先でつつこうとしてる。
やだ。怖い。止めろ。近寄るな!
けどバケモノは、じーっと私を見、大きな鼻先でつついてきた。
ふぎゃっと転がされ、私は仰向けになりながら威嚇。
食えるものなら食ってみろ! 貴様に一矢報いてやるからな!
けどバケモノグマは首を傾げる。鼻を鳴らし、笑っているように思えた。
そのときノックの音がし、部屋のドアが開いた。
入り口で丁重に一礼したのは、
「おはようございます、カイナ様、坊ちゃま」
ギルベルトさーん!! ごはんーっ!!
私は瞬時にクマのバケモノのことを忘却し、執事さんの足下まで全力疾走!
ニャーニャー鳴きながら、ギルベルトさんにまとわりついて身体をこすりつけた。
ギルベルトさんは柔和に微笑み、かがんで私に手を差しのべた。
「無事におやすみになられたようで、何よりです。お食事の用意が出来ております。どうぞ」
わーい!!
私は喜んで、ギルベルトさんの腕に飛び乗り、ゴロゴロと喉を鳴らしっぱなし。
「お坊ちゃま。どうなさいました?」
怪訝な顔でギルベルトさん。
見るとクマのバケモノ――もとい、クラウスさんが鼻にしわをよせ、こちらを見ていた。
知らんがな。
…………
子猫用のお皿の前で、私はギルベルトさんに鳴いた。
ギルベルトさん、少ないです。もっと食べたいです!
執事さんはすまなそうに、
「申し訳ございません。カイナ様のお身体ですと、その量が適当かと」
子猫は抗議の鳴き声を上げながら、お皿を舐める。
そして顔を上げ、横を見た。
クラウスさんは食事中。山盛り……『山』かと思うような量のレバーを食っていた。