第6章 悪夢の後日談
ん? クラウスさんが鼻を鳴らしてる。
『こっちに来たまえ』と言いたげ。
こんな凶暴生物と一夜を共にするのはゴメンだが、クマの口に閉じ込められるのもゴメンだ。
私は渋々、クラウスさんのとこに行った。
……しかし見れば見るほどデカいなあ。
さて、どこで寝るのが一番安楽かつ安全であろうか。
私はクマの周辺を探検に出る。
クラウスさんは私が何をしてもピクリともしない。
彼なりに私をつぶさないため、絶対動かないつもりらしい。
なので私は安心してクラウスさんの周りを回り、寝床を探した。
お顔のそばに行き、子猫のちっちゃな鼻で、クマのデカい鼻をかぐ。
するとヒグマの顔が近づき――。
んあ。キスされた。鼻ひっかくぞ!
威嚇すると、フッと息を吐く音。
ん? クラウスさん、今ちょっと笑った?
とか思いつつ私は引き続き、クマの周りを大冒険。
爪立てて背中によじ登っても、クラウスさんは全然怒らない。
ただ碧の瞳で、私の動きを追っている。
うわ。背中はほとんど小高い丘だ。でも万が一動かれたら落っこちちゃうか。
私はてとてとと背中を歩き、気が済んでから、つつつっとクマの鼻面を滑り下りた。
そしてクラウスさんの前足に場所を定めると、身体を丸めた。
ゴロゴロゴロ。
喉が勝手に鳴ってしまう。
クラウスさんはやっと頭をのっそり動かし、私の匂いをかいだり鼻先でつついたり。
そしてべろっと舐める。
うわ! 毛繕いしてこないで下さいよ!!
舌がでかすぎて、私の頭を丸ごと舐めてるし、この下手くそ!!
私はつむじを曲げ、クラウスさんが舐めたところを自分で舐め直す。
クラウスさんは気を悪くした風でもなく、私を見てた。
……何か、人間のときとあまり変わらないような。
悔しいので私はクラウスさんに向き直り、ちっこい舌で毛繕いのお返しした。
……敵がデカすぎ、毛繕いどころではないが。
でもクラウスさんは気持ちよさそうに目を閉じてくれた。
私は毛繕いを頑張ったが、すぐに眠くなり、大あくびした。
そしてまたクラウスさんの懐に戻り、ゴソゴソと前足の間で丸くなる。
ぬっくい。
ゴロゴロゴロゴロと喉を鳴らしまくると、クラウスさんが顔を寄せてきた。
そして、いつの間にかぐっすり眠ってしまった。