第6章 悪夢の後日談
「チビが……旦那に食われて死んだ……!」
撮影してたザップさんが、ポロッとスマホを落とす音が聞こえた。
いや生きてるし!!
私はクラウスさんの口の中で、激怒して鳴いた。
「あ、なるほど。首筋をくわえようとしたけど、カイナが小さすぎて失敗したんだね」
合点がいったようにチェインさん。
「もう、不器用なんだから! でもそんなとこも可愛いわ、クラッち!!」
いい加減、黙って下さい、K・Kさん。
というか私を口から出せ、野生動物っ!!
しかし脱出はかなわないまま、クラウスさんは移動し――。
うおわっ!!
ポロッと吐き出された。ゴロゴロと転がった場所は、クラウスさんの執務デスクであった。
慌てて起き上がると、間近に巨大アラスカヒグマの目。
私をうかがい、鼻先でつついてくる。
シャーっ!!
私は怒りに満ち、爪をむき出しにした。
すると横から咳払いが聞こえた。
「あー、その、静かにしてもらえるか、お嬢さん。
クラウスは君が心配なようだし。ここで寝ていたらどうだ?」
相変わらず私の優先順位低いな、スティーブンさんっ!!
ギルベルトさんも抜かりなく、猫用ベッドを持って来た。
「ベッドをお持ちしました。カイナ様、どうぞ」
こ、こんなので寝ないしっ!……結構ふわふわっぽい。寝心地を試すだけ!
ちょっと素材を確認するだけだから!!
ゴロゴロゴロ。
……五分と経たず、たちまちへそ天でゴロゴロするわたくし。
私が猫用ベッドでくつろぎ出したのを見て、クラウスさんは何やら満足そうにお仕事に戻る。
「おまえらも本当に仕事に戻れ。減給するぞ!」
スティーブンさんに再度どやされ、皆はぶつくさ言いつつ、三々五々に散った。
「全く……これならどちらかが人間だった方がまだマシだ。早く戻ってくれよ」
ため息をつきながら、スティーブンさんは私のお腹をこちょこちょ撫でる。
私が間髪入れず爪を出したのは言うまでもない。
…………
…………
そしてその日は緊急招集等は特に起こらず、無事に業務を終え帰宅したのであるが。
「ですから、別々にお休みすることをご提案させていただきたいのです。お坊ちゃま」
私の家ではシュールな光景が広がっていた。
執事さんが、大真面目にアラスカヒグマに話しかけていた。